豪雨後の飛騨山中は濁流にのまれて

7月22日(土)

 このところ毎年こんな感じなので、何を今更という感じな豪雨なのだが、やはり地球温暖化は深刻な状況なようだ。人類はえーかげん目を覚まして、エアコン使用禁止、コンビニ24時間営業禁止、自家用車使用禁止、夜9時以降の点灯禁止、夜はさっさと寝る、ぐらいしないと日本沈没の日は近いぞ。6%ばかではまさしく立て板に水、豆腐に鎹、馬の耳に何とかだな。でも特に目先の経済効果を至上とする現代日本に置いては、こんな意見の方がまさしく立て板に水、豆腐に鎹、馬の耳に何とかだな。

 おおっと、いつになく真剣に熱く語っちまったぜ。なぜこんな話になったかと言うと、まあ、後々はっきりするのだが、とにかく豪雨の続いた今週、奇跡のように土曜日は晴れたので、すでに前回のツーリングから3週間も経過してしまったCB1300出撃以外に考えられないのであった。我がHONDA最高のオートバイ、世界最高のオートバイ、コートネーム“ブラックパール”は、その由来となった映画の、全世界が期待した続編「パイレーツオブカリビアンデッドマンズチェスト」のクライマックスでクラーケンに沈められてしまったので不吉と言えば不吉なんだが、高速道路でパトカーに捕まるわ、伊豆に行けば全行程雨にたたられるわ、北海道ではおかま掘られるわとまさしく波瀾万丈なので、今さら怖いもんねーぜ。

 5時半起床、勤行して飯食って顔洗ってうんこして、クシタニ穴空き皮ジャン上下を装着すると7時、実家ガレージから出発だ。久々に引っ張りだすと、チェーンがちょっと油切れっぽかった。帰ってきたらさそうか。雲は多いが、太陽がのぞく、いい感じの天気だ。まずはいつものセルフスタンドで満タンに給油しよう。スタンドにバイクを止めてカードを入れて油種を選択してさあ入れるぞ。あれでない。おかしいな。よく見たら軽油のノズルだった。危ない危ない、選択した油種と違ったからでなかったのでよかったものの、軽油が入ったりしたら万事休すだった。もう一度やり直して7リットル給油、満タンだ。よしでは出発。

 19号線を調子良く走り、内津々峠を越えたら空が雲で充満していた。まあ、まだ朝早いから雲も残ってるんだろうな。これから晴れてくるさ。そう前向きに考えて多治見から可児を経由して、途中で後方確認の甘い軽トラが突っ込んできそうになってびっくりした。じじい、ちゃんと見ろ。木曽川を越える橋の上から川面を見ると濁流増水、茶褐色の水が白い波で牙をむくように荒れ狂っているではないか。しかも、ちょっと遠くを見ると、川面から立ち上る水蒸気がまるで霧のロンドン空港のような深い闇を作り上げている。恐ろしい、この先の今回のツーリング、何かとんでもないことが起こりそうだぞ。41号線に入ると、飛騨川の川面も同じような状況で、明らかに水位が高く、昨日までの豪雨の凄まじさを赤裸々に物語っているのであった。七宗ダムの放水も凄まじく、荒れ狂う猛獣のような激流だった。あの中に万が一でも落っこちたら間違いなく溺死するなあ、キンブル先生は度胸があったなあ。しかし、その先の高山線がトラス式鉄橋で川をまたぐあたりは川面の水蒸気上昇のもやが日の光が差してちょっといい感じだった。うーん、D70があったら写真に撮りたかったが、日帰りツーリングは装備重量の関係でソニーだもんだから無理だなー残念。

 そんな感じで快調に走っていったが、白川辺りでスローな昭和シェル石油のタンクローリーに捕まってしまった。こういう業務用車両は通常勢いがいいはずなんだが、このローリ-、免許取り立てなんだか、単純にそういう性格なのか、それとも携帯電話中なのか、制限速度とほぼ同じで走っているので、非常にストレスがたまるのである。おいおい、もうちょっと速く走れて。その後ろの道路工事トラック、そして観光バスも金魚の糞のごとくとろとろ走ってついている。ちなみに観光バスの名前が「ファースト観光」速そうなんだが。これでは全然駄目だな。反対車線に出て追い抜くような下品な行為をするのは意に反するので、仕方なく金魚の糞になっていたが、下呂あたりの信号でしびれを切らして前に出た。後は追いつかれないように制限速度+αで飛ばす。その先では馬瀬川への立派なループ橋が完成していた。

 ようやく濁河温泉への分岐点に到達、ここまで約2時間半早いのか遅いのか、昭和シェルのせいだな。国道41号線から県道437号線に入って、ひめしゃがの湯の看板を無視、今回は濁河温泉の看板をたよりに進む。33キロだそうで。すると「通行止め」の道路情報がなにげにちらりと目の片隅に入った。げげ、まさか、ちょっと心配していたが、この豪雨で土砂崩れか? 確認の為に、ちょうどあった道の駅に入った。とりあえずトイレをすませて館内に入って道路情報を探すが、ない。訳の分からん地元農産物やら土産物やら喫茶店と言った商売根性丸出しのどうでもいいものはいくらでもあるが、肝心の道路情報に関するものが何もないし休憩所もないこれで道の駅かアホかこれはただの商売屋だくそったれ国土交通省の陰謀だ日本は沈没するぞホンマに。

 行ける所まで行ってみようということになり、道の駅を後にした。わずかな望みに希望を託し、山道を登っていくと、真っすぐが鈴蘭高原、右折が濁河温泉の分岐点に出た。

 全面通行止めでした。

 濁河温泉方面、行けません。レインボーブリッジ封鎖できません。温泉入れません。天は我々を見放した。茫然自失状態の43秒後、案内看板に「秋神温泉」の文字があった。あ、ここ聞いたことあるな。走る胃袋、食い物の為なら火の中水の中、食い物の要素が全てに優先する人のレポにあったぞ。内容はよく憶えていないがまあいいや。よし、ここに行こう。

 ここに行こう、と言ってもよくわからんのでとりあえず真っすぐ進んだ。標高1250メートルの標識が、視覚的に体感温度を5度くらい下げてるぜ。無数に開いた空気の抜け穴からひゅーひゅーと風が抜ける。涼しい。涼しすぎる、寒い。鈴蘭高原に突入すると、高蔵寺ニュータウンの分譲住宅みたいな別荘がいくつも建っていた。これだけ温度が低いと素晴らしい避暑地になるから、別荘にはもってこいだな。しかし、なぜ、どの建物も高床式住居なのだろう。これだけ樹木が覆い、なおかつ高低差が激しい土地に建築するのは大変だったろうなあ。やがて右手の展望が開けてくると、雲の切れた青空を背景に御岳山がどーんとあらわれた。おお、素晴らしい。こりゃいいわ。バイクを止めると写真を撮影、まっちゃんにもメールで送る。多分寝とるだろうなあ。

さらに先へ進むと、秋神温泉の看板があった。とりあえずこの道で正解のようだ。どんどん走って上がって下がって、コンビニの横をすり抜け、鈴蘭高原プチペンション村を抜け、民宿がたくさん集まってる所に入った。そこでまた看板発見。真っすぐ行って突き当たりを右に曲がると秋神温泉だ。行くぜー。秋神高原こちらの標識にあわせて細い道を走って、どんどん進んで、えー、あれ、標高1250メートル・・・なんか見たことあるな。げ、戻ってしまった。間違えたんだ。もう一度、同じ道を走って、途中で、某置き薬屋の営業車が止まっていた。必死に顧客台帳をめくっているとことを見ると、昨日行動計画をしっかり立ててなかったんだなー。焦るんだよなーあれ。そういう時代もあったなー。と昔を懐かしんでいるうちに、正解の分岐点に出たので右に行く。しばらく走っていくと、急に路が狭くなった。その先の道は半分河になっていた。山からの雨水があふれて道に流れ込んでいるのだ。ぎょえー、濁流に突っ込んで、おれのCBにどろがー、おれの美しいCBにどろがー。仕方がないまた洗うか。しかし、周辺の豪雨後の傷跡がすごいな。濁流、土嚢山積み、修繕の為の道路工事軍団、秋神温泉についたが、バイクを止める所がないので何度も行ったり来たりして、結局道路に止めるしかなかったので止めた。

 秋神温泉は昔ながらの古式豊かな旅館風情が漂う温泉で、この状況で温泉入れるのか心配だったが、入浴できるというのでほっとする。しかし、男湯はこの豪雨のせいで使用不可、というわけで女湯に入ることになった。うひひ、女湯だぜ、わくわくするなー。案内されてみたら、まあ、ようするに、普通のお風呂だった。うーん、女湯だと言っても、一人で入るんだからカンケーないじゃん、バカみたい。旅館のお風呂なので、内湯のみのシンプルな造りです。ガラス張りの向うには渓流が見えるのですが、昨日はここが暴れ竜のような状態だったのだなあ。脱衣籠に荷物をまとめてどぼんと入るとお湯は茶褐色の不思議な感じで、温泉成分に鉄が含まれているようで貧血に良さそうだな。

 温泉を出てこちら側からも濁河温泉に通行止めで行けないので諦めて、とりあえず昼飯にすることにした。高山に向かう。道の半分が河になった道を下りて、途中でくるみ温泉というのがあったので、そこにしとけばよかったかなーと後悔しつつ、案内標識に従って高山を目指す。美女街道に入って、こういう地名に限って美女なんかいないぜと思いつつ、道はカッコーンと飛ばせて気持ちがいいので、くー、いい感じだぜえ(cコンタロウ)すると見晴らしがいい所に出たのでバイクを止めて写真を撮った。バイクが2台やって来て通過していった。女ライダー、しかも上はタンクトップだぞ。若さにかまけて紫外線対策を怠るとそのうちに泣きを見ることになるぜ。追いかけて注意しようと思い、カコーンと走り出す。長いトンネルを抜けて、適度なワインディングが続く、この美女街道は本当にいい道だ。でも女ライダー2名は平湯方面に行っちゃった。残念。

 高山に入ってコンビニに寄る。温泉に入って水分補給もしていないし、腹が減ったし、飯食う所もないし、とりあえず腹ごなししておこう。岐阜ではおなじみのタイムリー、店の前にベンチがあるのがいいんだよなー。バイクを止めて店に入り、飲み物のコーナーに行くと、なんと、コカコーラ350+150増量で100円だよ。買いや。後ヤマザキのコッペパンを買ってベンチに座って食った。喉が渇いた空きっ腹にコカコーラが染み渡ってパワーになるぜ。食ったら行こう。このまま41号を戻るのも芸がないのでせせらぎ街道に入ることにした。41号線から158号線に入って順調に走る。岐阜の走り屋のメッカだから、スーパースポーツがギュイーンギィーンとかっ飛ばしてるかと思いきや、XJRに抜かされただけで、後は全然バイクに会わなかった。そうこうしているうちにパスカル清見についたので、トイレ休憩にした。バイクの数も少なく、いまいち盛り上がりに欠けるな。ライダー丼を食う気にもならず、(コカコーラが胃袋に残ってるので)早々にパスカルを後にした。どうにも物足りないなー。やっぱり温泉があれでは駄目だ。この付近でもっとゆったりできる温泉はないものかと思ったら、あるじゃん、馬瀬川温泉だ。美輝の里だ。幸い、割引券は標準装備されているから、安く入れる。いこいこ。

 トンネルの前を右折して山道をウネウネ走っていくと、さほど時間もかからずに馬瀬川温泉に到着した。ここは駐車場まで遠いのが玉にきずだが、温泉は最高だ。バイクを止めて温泉セットを持ってホテルに入る。割引券を受付で出して700円を500円で入る。ブーツを棚に仕舞って階段を下り、温泉だ。荷物をロッカーに突っ込んでいそいそと浴場に向かう。体を洗ってさて入るぜ。ここはとにかく露天風呂が最高だから、内湯には見向きもしないで外へ行く。あ、内湯、前回全部入ったつもりだったが、洗い場の奥にも湯船があったんだ。全然知らなかった。コンパートメント式のサウナもあるし、前回見落としていたな。露天風呂に入ってぷひゅー天界天界、雲があるので日差しも強くないからちょうどいい。ここの露天は露天風呂というより、野外風呂、屋外風呂という感じなので、日差しが強い日はに日射病になりそうなので注意が必要だな。いやー、しかしそれにしても本当に気持ちがいい。鳥がピーヒャラピーヒャラさえずってるし。十分ゆっくり入ってから、壷風呂、寝湯、深湯と入って満足して出た。脱衣所でしばらく涼んで皮ジャン皮パン装着、休憩用の畳の所でお茶を飲んだ。温泉ラリーの岐阜新聞の記事が壁にはってあったので読んだ。ちなみに、私の完全制覇の抽選は全て外れました。くそったれ。

 温泉を出て、そういえば今日は花火大会だったことを思い出し、一目散に帰路についた。

 本日の出費

温泉2回 合計1000円

パン 92円

お茶 250円

走行17730キロくらい

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