朝霧の立つ曽爾高原の寂れたリゾート
12月16日(土)
早いものでもう12月も半ばとなり、いよいよ今年も押し迫ってきたがねと言わんばかりの忙しなさ。西高東低の気圧配置も厳寒な冬の到来を告げるのであります。しかし、寒かろうが暑かろうがライダーは走ってナンボじゃい。冬眠などと言う言葉に無縁なのだ。年内最後のチャンスのこの週末、前から行こうと思っていた、温泉ラリー最南端の温泉、奈良は曽爾高原亀の湯に目標設定、天気予報は昼から曇りで夕方から雨なので、短期決戦が必須である。この場合、不本意ではあるが高速道路使用の禁じ手も使わねばなるまい。
前日に地図で確認すると、赤目四十八滝のお隣じゃないか。うわ、
結構遠いな。
やばいなー。こんな寒いのにこんな遠いところにバイクで行くのかよ。やめとこか。近場でお茶を濁す手もあるよな。うーん、しかし、「寒くてもバイク」なんてぶち上げた手前、寒いので近場にしましたなんてツーレポでアップしたら、でかいこと言ってるけど寒いので近場しか走らないチキン野郎なんて烙印を押されかねないぞ。それだけは困る。絶対に困る。何と言おうと困る。ここはひとつ、ライダー根性を見せてやるぜ。
当日は朝から晴れて、さほど寒くなかったので、防寒対策はレベル4のクシタニ製防寒前掛け装備で行くことにした。最終兵器クシタニツーリングワンピースの出番は、やはり最高気温一桁まで下がってからだな。そして今回、初陣となるのが新グローブだ。クシタニ最高峰モデルのゴアレザーグローブをこの前買ったのだ。割引ポイントの有効期限が来年1月で切れるので、それを使って買ったのだ。前のグローブはもう10年くらい使ってたので、そろそろ新しいのに変えても罰はあたらないだろう。新しいのは袖の部分をしっかりカバーするので暖かそうだ。
出発は7時30分、雨に降られないように早めに帰ってくる為には早く出発した方が良いからな。寒くてもエンジンは1発始動さすがPGMだぜ。いつものところでガソリン満タンリッター123円を入れると前回300キロ走って15リッター入った。安全運転は地球にも優しいのだ。
満タンになったので19号を勝川に向けて走る。土曜日だと言うのに幹線道路はトラックや営業車も多いな。バイクは全然いないと思いきや、黄色いドカとGL1500を見た。好きな人は乗るんだなー。天気良いしな。8時に予定通り、東名阪の勝川インターに到着。ETCがないので一般のレーンでもたもたとお金を払う。そして高架道路に入るとコイーンと吹っ飛ばして走って行く。たしかに寒いがそんな我慢できない寒さでもないので調子良く飛ばして名古屋西に着いたのは13分後だった。さすが信号のない有料道路、下道なら1時間くらいかかってたな。そこから亀山方面にスイッチ、海岸が近いせいか朝の時間帯のせいかぐっと冷え込みがきつくなった。なんか、妙に下腹辺りがスースーして冷えるんですけど。お腹が冷えて調子が悪くなったらどうしようとビビったが、長島を越え桑名辺りまで来たら陽が差してきてだんだん暖かくなってきた。これはええ、どんどん走って先を急ぐのであった。隣に走る観光バスは八風観光です。じっちゃんばっちゃんがどこへ行くのでしょうか。自分で運転しんでもいい観光バスは楽でええな。前方には奈良ナンバーの10トントラックだ。荷台の後ろには「出会いを求めて昨日は湯の町今日は港町一人旅」なんたらかんたらと書いてあった。かっちょええ。
9時過ぎくらいに液晶プレイとローソク責めで有名な亀山に着いた。料金所でまたしてももたもたとお金を支払う。そこからは一般国道なのに高速道路の名阪国道だ。いい気になって捕まらないように気をつけながら法廷速度+αですっ飛ばす。そろそろどこかで止まって地図を確認した方がいいな。相変わらず無計画なので道がよくわかっていないのであった。このあたりはあまり来たことがないので勘と度胸で走っているとやばい。ましてや今回初めて行くところだし。道の駅かドライブインで止まろう、と思ったところに「名阪国道霧注意」の表示。霧かよ。なんか雰囲気いいんでないの、なんて思っていたら、伊賀辺りからものすごい霧発生。まさしく霧のロンドンエアポート状態。前を行く車の赤いライトがたよりだ。雰囲気どころの騒ぎじゃないぜ。温度も急激に冷え込み、これはまさしく緊急事態なのであった。止まって地図見るなんて無理です。何とかこの霧の都ロンドンを脱出しなければ。
しかし、行けども行けども霧の中なのである。まさしく私の人生五里霧中の手探り状態なのである。これは行き過ぎるかもしれないので決断した。中津のICで下道に降り、そこにあったミニストップでストップする。暖かい紅茶を買って飲みながら地図を確認すると、このすぐ先の上野ICから名張市に向かうとすぐだ。時刻は9時30分、この分だとかなり早く着くことが出来るな。曽爾高原は温泉ラリーの本によるとなかなか賑わいのあるリゾート地のようなのでゆっくり出来るとうれしいぞ。まあ、この期待は見事に裏切られるわけだが。
さっそく出発。ちなみに、このミニストップ、去年の12月17日『20年ぶりの寒波に挑んで惨憺』篇でも寄っていたよ。あの時は雪がひどかったなー。
上野で国道25号から422号にスイッチし、165号で名張市に入る。ようやく霧が晴れて青空が見えてきた。目的地はすぐそこだ。おしっこがしたいが何とか我慢してそこまで持たせよう。
ところが、どんどん走って行ったら何か変だぞ。赤目四十八滝の看板が出てきた。曽爾高原はその手前のはずなので、もしかして行き過ぎたか? サークルKで緊急停車し、再度地図を確認すると、案の定、来すぎていた。青蓮寺ダムの標識があったところで曲がらないかんかったようだ。幸いなことに赤目の方からも行けるようだ。戻るのもいやなのでまずは赤目に向かった。しかし、分岐点まで来てその道を目の前にすると驚愕の極みであった。まるで
登山道のようなとんでもない山道
じゃん。おいおい、この先進んで大丈夫か? これは戻った方がいいんじゃないのと即決、本来の道に戻るのであった。これでかなりの時間ロスをしてしまった。おしっこもしたいのに、くそ、急がねば。
なんとか本来の道に戻って先を進むと、こちらも結構な山道、うーむ、どっちも同じだったね。そして急に路が開けるとそこに現れたのが青蓮寺湖だった。いやー、なかなか風光明媚な環境で、重厚な造りの歴史の重みを感じさせるアーチダムがでーんと鎮座しているのであった。おしっこも忘れて写真を撮ったら、トイレがあったのでようやく膀胱の圧迫感を解消できた。尿道結石をやってから、おしっこは我慢しないようにと言われていたのに。
ダムを後にしてさらに山道を進むと、有名な香落渓に入った。細い山道の両脇に険しくそびえ立つ岸壁が様々な光景を見せる。紅葉はほとんど終わってしまったようだが、その時期にくれば素晴らしいみはらしだろうな。
工事が多いけど。
香落渓を過ぎると、ついに曽爾村に突入だ。深い山の中の村落は、まさしく横溝ワールド、市川崑最新作リメイク板「犬神家の一族」が公開されるのに先立って、奈良県曽爾村からお送りします状態だ。金田一さん大変だ!と駐在さんが走ってきそうな雰囲気。亀の湯の看板があり、案内通りに走るとすぐに着いた。時刻は11時ちょっと過ぎた頃。4時間かかったな。
おお、曽爾高原に広がる一大リゾート・・・なんか違うな。いやに静かだな。なんか、寂しいな。お店のシャッター降りてるし、野外テントはたたんであるし、ガイドブックとは雲泥の差の寂れように、しばし沈黙を持って答えるしかないのであった。もう一度、温泉ラリーの本を確認したくらいだよ。間違ってないなー。やっぱりここだよな。仕方がないか、冬だもんな。こういうところは夏に来るもんだよな。賑やかしくなくても仕方がないよ。自分にいい聞かせつつ、バイクを駐車場に止めて温泉セットを持ち、いそいそと亀の湯に行く。
温泉はどこかと案内図を見ると階段を登った上の方だった。和風に造られた建物の立派な門をくぐり、玄関から入る。靴を脱いで、下駄箱の一番下の大きめサイズにところに入れた。すぐにこじんまりした売店があり、じいさんが暇そうにしていた。入浴料は発券機があったが、優待割引なので受付に直接行く。係員がいて、温泉シールのセットを出すとすぐに理解してくれた。1割引(ちなみに70円、他のところは100円引きが圧倒的に多いんだが)で料金を払う。シールも貼ってもらって、すぐ隣にある暖簾をくぐり温泉だ。脱衣所は普通の規模で、100円リターンのロッカーはそこそこの大きさ。しかし、フル装備だったら荷物は入らないので2つロッカーを使うことになるな。ぎゅうぎゅうに荷物を突っ込んで、お風呂に向かう。
風呂場は内湯が2つに露天風呂がある。そこそこの広さだな。まず、混んでいる洗い場で体を洗って、内湯の源泉かけ流しに入った。さすが加熱していないのでぬるいのだが、おゆがぬるぬるしていてものすごく気持ちがいいぞ。こんないかにも温泉の湯は久しぶりです。いいねー、露天風呂に移動すると外はさぶっ、慌てて湯につかるとちょっと熱めだ。でも外の寒さから考えるとこれくらいがちょうどいいな。肩まで浸かったまま湯の中を動いて見晴らしのいい所で落ち着いた。開放感のある露天風呂で曇ってきたのが本当に残念。晴れていれば最高なのだが。
ヘリコプターが飛んで行くのを見て、湯につかっていたじいさんたちがあれは材木運搬用のヘリでチャータ料金が1分1万円位するだの、だから高級な材木しか運搬できないだの、なにしろ山奥に行かないとそういったいい材木はないが、林道では運んでいられないだの、と言った話を延々していた。勉強になった。
内湯に戻って源泉かけ流しをもう一度たんのんしてから出た。ロッカー室に戻って服を着てから分析表を捜したがなかったので諦めて出た。
「再入浴は出来ません」と手書きの貼紙がしてあり、なんだかなーこんなど田舎の温泉が何生意気ぬかしてんだよボケ再入浴ぐらいさせろや、と思う人もいるのかなーと思いながら受付の前の休憩スペースで一休みした。来た道を思い返しても何もなかったので、昼飯はここで食わないと食い逃すことになるな。温泉の反対側にレストランがあるので行ったら、当店はセルフサービスですと貼紙がしてあった。外にメニューが出ていたので読むと、牛めし800円うどん650円云々と書いてあった。うーん、この価格設定が高いか安いか賛否両論あるでしょうが、最近の食生活では牛丼なら復活した吉野家の方が安いし、うどんなら丸亀の方が安いし、地元名産ならいざ知らず、すでに曇りになっている天候の先行きから帰宅時間をもっと早くしないといけないなど危機感を募らせている今、帰りも掟破りの高速道路採用なら1650円を財布に確保しなければならないと焦っている今、残念ながら適当な価格設定と判断しかねるのであった。
ということで、温泉を後にして駐車場に戻ると、実に場違いなヤンキー若者風の一団がいて、露店のジャンクフードを食っていたが、彼らも賑わいあるリゾート地と騙されてきたのだろうか。残念だったね。
空は全面結晶デジタルならぬ全面曇り空なので直ちに帰路につくことにする。途中でコンビニでもよって昼飯にしようと思ったが、帰り道、何だか前々記憶にない風景ばかりだぞ。どうやら曲がるところを間違えたらしい。県道81号線を走るつもりがいつのまにか国道369号線を走っていた。快調に飛ばせるのでそのままどんどん前進したら、見覚えのある道に出た。去年の盆休みのツーリングで走った道だ。ということは、なんと、
全然大回りじゃないか。
まあいいか。
そのまま真っすぐ走ると名阪国道の針ICだ。後は名阪国道で一気に帰れるのでの手前のドライブインで止まった。駐車場を奥まで進むと、バイク用スペースがあり、そこにはバイクがずらりと並んでいた。走ってる時はほとんどライダーに出くわさなかったが、こんな天気でもみんな出て来てるんだな。ナンバーを見ると関西方面ばかりだ。ドライブインでは何か食おうかと思ったが、長いこと空腹が続くと食欲が無くなる体の不思議がそのまま稼働してしまったので、ホット紅茶を飲んで名阪国道に入った。
後はひたすら走って帰って来た。
本日の出費
有料道路 1650円×往復
温泉 630円
紅茶 147円120円
ガソリン カード
走行距離 21650キロ