祭りの日に奥飛騨温泉郷

4月15日(日)

先日のツーリングで予定外の怒濤の豪雨を浴びたのを教訓に増々天気予報の情報収集をシビアに行ったこの週末、なんだか先週と同じような晴れのち曇り気圧の谷が通過の不安定な天候となったが、気象庁の天気分布予報を確認すると、大丈夫のようなので、先週のリベンジと意気込んで行くのだ。

今回の目的地は福地温泉なのだ。方向的には漠然と高山方面41号線を今年になってまだ走っていないので、もういい加減に雪も大丈夫だろうと、高山方面で行くのならやはり平湯穂高の奥飛騨温泉郷であろう。そして、思い出したのは先日のツーリングでちょっと話題になった荒神の湯、ずいぶん昔に行ったきりだから久しぶりに行ってみるか。ところがネットで情報収集していたら福地温泉の存在もあったのであった。福地温泉と言えば、意外な穴場で、去年、新穂高温泉に行く途中で看板を見つけたにもかかわらず通過していた温泉ではないか。うむむむ、これは、この温泉の方が面白そうだぞ。ネットでさらに情報収集すると昔ばなしの里なる施設の中に日帰り入浴可能な温泉があるようなので、今回の目標地点にロックオン完了! 行くぜ。

前日の準備をしっかりして、天気の崩れを警戒して早めに行って早めに帰る時間配分でルート計画、前回豪雨を浴びたクシタニ革ジャン上下は、必死こいて手入れしたおかげで全く問題なく装着出来た。4月半ばと言うことで、装備をどうするか考えたが、行くところは標高が高いのでやはりほぼ冬装備で決定。まっちゃんに高山祭りだから混雑するんじゃないの? と言われてがびーん、そんなこと計算に入ってないよ。やばい、渋滞に巻き込まれないように高山市外を迂回するルートを走っていこう。では出発。

毎回の通りにコスモでカードを使ってガソリン満タン、今回も往復350キロ以上走ることになるので口元までいっぱいに給油したら350キロで約17リットル、まあまあの燃費だな。満タン完了、時刻は7時ちょっとすぎ、予定では4時間で目的地に到達出来るはずだ。意気揚々と19号線に出て走り出す。天気は薄曇りだが、太陽は元気よく照ってきそうなのでポカポカ陽気が期待できるぜ。ちょっと暑いかと思ったがこのほぼ冬装備のおかげで走っても全く寒くないので調子良く飛ばしていくのであった。

多治見からいつもの可児経由、川辺で41号線に合流する。長いことほったらかされていた、閉鎖された西武自動車販売の建物が運送会社のターミナルに変わっていた。日本経済の再生の兆しがここにも見えるのであった。どんどん走っていく。いつの間にか薄曇りは消えて空は青空が顔を出している。七宗からいよいよ岐阜県山間部に突入する。おお、さすがにこの時間の岐阜山間部は体感温度が低いぜ。41号線の至る所にある電光掲示板には6度7度8度の表示だが、これまでの冬ツーリングだとこの温度で充分温かいと感じたものなのだが、これが4月のマジックなのか、ちょっと寒い。だいぶ寒い。かなり寒い。いやー、このほぼ冬装備で正解だったよ。春装備にしていたら寒くて死んでたな。寒いわりにこのあたり桜は既に終わっていた。ほとんどが葉桜となっている。残念だな。

時間が早いので、渋滞もなく順調に走る。下呂をすぎると桜がまだこれからのような感じになってきた。来週当たりに満開かな。出来ればバイクと桜を写真に撮りたかったが、なかなかいいところがなく残念。

こんなふうにして、たまにとろとろ走る軽トラ、紅葉マークのじいさんなどをかわして道の駅渚まで来た。ここでトイレ休憩を取る。ツーリングマップルでルート確認、やはり高山市内を迂回するのが最善の策だな。すぐに出発する。久々野の信号待ちで前を走るシエンタのドライバーが、とっても陽気に指パッチンしながら踊っているのが見えて、自分もたまにああいうことをするので、初めて第三者的立場で見ることが出来て大変有意義だった。

ものすごく恥ずかしいね。

もうしないようにしよう。そのシエンタがまた飛ばす飛ばす、宮峠までののぼりの緩やかなカーブ登坂車線をゆうにピーキロですっ飛ばしていく。おいおい、パトカーに捕まったら一発免停だぞ。途中までついていったが、やめ。捕まったり事故ったりしたら大変だからな。

問題の宮峠は相変わらずのグルーミング道路でビビりながらヘアピンカーブを下る。臥龍桜の有名な飛騨一宮あたり、まだまだ桜はこれからだ。道中には高山祭りの案内コーナーが臨時設営されている。市内の入り口直前で県道にシフト、迂回ルートで158号線に入り、選挙事務所の大勢の人だかりを横に、どんどん高度を上げていく。金塊強奪事件の記憶も真新しい、観光の目玉を失った悲しい奥飛騨鍾乳洞を過ぎ、(おいおい、観光の目玉は鍾乳洞でないの?)ここから一気に標高を上げる。登坂車線でセリカとエスクードを一気に抜かし、かっとんで行くぜ。さすがにここまでくると残雪が出現し、道路には所々雪解け水がちょろちょろしている。以前、いい感じのレストランだったところがわんわんホテルになっていた。秘境五色沼を越えて恐怖の平湯トンネルに入る。何が恐怖って、このトンネル寒いんだよなー。しかし、今日は冬装備のせいかなんとか大丈夫だった。トンネルと出ると片側交互通行の工事中だった。この辺りの舗装は劣化損傷が激しいからな。抜かしたセリカやエスクードに追いつかれた。ちょっとかっこわるい。工事中を過ぎると山並みを縫うように空中を走るヘアピンカーブ、遠くには雪をかぶったアルプスの山々が見えるのであった。遠くまで来たことを実感するひとときである。

平湯バスターミナルを通過、巨大な雪の塊が残っているのがすごいな。溶けるのにどれくらいかかるのだろうか。471号線に入り、クマ牧場を越えたらすぐに福地温泉の看板が現れた。そちらに曲がって下っていくと、大きなホテルがあった。そしてその駐車場には客車が2両きれいに再塗装されてあった。かっちょえー、しかもお気に入りのモデル、キハ系だし。あとで写真とろう。その先に福地温泉の看板があり、橋を渡るとそこが秘湯福地温泉だった。おおーっ、これって、橋が落ちると陸の孤島になるってヤツ? でさ、昔落ち武者が村人に殺されてそれを弔う塚があったりして、雨の日の夜に殺人が起きるんだよきっと。錠前が落ちてるんだよそこには。金田一さん! 桔梗屋さんがころされた! しまったあー! 

橋から一本道には両脇に昔からの由緒ある温泉宿が点在し、真ん中当りで温泉の給水堂みたいな建物がある駐車場に出た。入浴出来ますの看板が出ているので、ここがきっと昔ばなしの里だ。駐車場にバイクを止め、温泉セットを持って看板の矢印の方におりていくと、福地温泉朝市が開催されていた。結構、客がはいってるじゃん。若いカップルの女の子の方がトマトを買ってがぶりついていた

うまそうだな。食いたいな。しかし、それより温泉に入りたいのであたりをうろうろ探すのだが、それらしい建物が見当たらない。さっきの道まで戻って、地図らしきものがあったところまで行ったが、そこには、ものすごくおおざっぱな源泉の表示があるだけだった。こまったなー、どこなんだろう。あたりをうろうろさまようと、ようやく、奥の方にそれらしき建物があったので近づいてみた。

ぼろっちい廃屋みたいなほったて小屋なんだが、まさか、ここが温泉とは思えないが、なかから死に損ないのばあさんが出てきたらどうしようとびびりつつ、がらがらっと横開きの戸を開けた。果たしてそこが温泉だった。普通の民家みたいなつくりで温泉だった。広い玄関土間でブーツを脱ぎ、奥の受付で、年季の入った係りの人に入浴料500円を払って、細い廊下を進むと、手書きの男↑女→表示がなんともいい感じに朽ち果ててきています。その先が脱衣所、すげー、ぼろい。それでも貴重品用に100円ロッカーがあるのが泣けるぜ。脱衣籠に脱いだ服を詰めて、貴重品をどうしようかと思ったが、まあ、こんなところだから大丈夫と思ってそのままにして風呂場に移動する。引き戸を開けて温泉を目の当たりにする。おお、これわ、まさしく秘境の秘湯のシチュエーション、天井が半透明のトタン張り、木造のいい感じに古くなった湯船、奥の方には源泉からのお湯がじょろじょろと流れ落ちている。カランは一組だけ、しかもこれ使えるのか? 仕方がないので洗面器で風呂のお湯を掬って体を洗って入る。う、ちょっと熱い。しかし、だんだん慣れてくると気持ちよい。流れ落ちる源泉らしきところに行くと、あちちちちち、めちゃ熱いぞ。源泉温度92度ってのは本当っぽいな。それにしても周りは全部ガラス戸で、外から丸見え、女湯がこうだったらヤバいんじゃないのか? いやー、これはいい温泉だよ。お湯はふつうに単純泉なので面白みはないが、この温泉環境はいいねえ。

充分たんのんしたので出ようとしたら、外に露天風呂があった。なんか、露天風呂かただの池なのかよくわからんのでちょっと様子見に行ったが、お湯がぬるいのでやめ。内湯にもう一度浸かってから出た。脱衣所でしばらく休んでいると、別の客が来た。おお、客が来るんだ。服を着て受付の玄関にもどると、半世紀前はおねーちゃんだった係の方が、休んでいき、と声をかけてくれたので奥の休憩所、囲炉裏があるんだ! で一休み。お茶をもらって、メニューがあったので昼をここで済ませることにした。ざるそば500円を注文する。囲炉裏の周りには串団子や岩魚の塩焼きが串に刺さって炭火に焼かれていたので食いたい、ちょっと食いたいかなり食いたいすごく食いたいものすごく食いたい

ああ、しかし、800円もするのは無理だ。断腸の思いで断念し、ざるそばを食った。うまかった。最近500円ぐらいで食えるざるそばないよなあ。食ってる最中、ちょこちょことお客が来た。半世紀前にはおねーちゃんだった係の方々は、お昼の準備をしつつ、お客に応対していた。お昼の準備は予約客でも来るのかと思ったら、自分らのお昼だった。なんかのどかでいいねえ。半世紀前にはおねーちゃんだった係の方々は、お昼を食いながら、来客の対応をする。普通の店でこんなことやってたらえらいことです。

食って温泉をあとにした。気をつけてなーと声をかけてもらい、駐車場に戻る。天気が崩れる前に帰るぞ。温泉のおかげでさすがに冬装備が厚く感じる。エンジン始動、温泉をあとにした。

とりあえず、平湯のターミナルまで戻り、まっちゃんに頼まれたみそを買うことにする。バイクを止めて土産屋の方に行こうとしたら、駐車してあるミニバンに白灰の子猫が乗っていて、好奇心おう盛なくりくりの目でこっちを見ているので、近寄ると、ますます興味を持って、ダッシュボードの上になんとかよじ上ろうと悪戦苦闘の末に成功し、こっちをじーっと見るのであった。いやー、猫って小さいとかわいいね。本当に好奇心がおう盛なんだね。うーん、かわいい。うちの愛想なしデブ猫とはえらい違いだな。あんまり覗き込んでいると不審者なので切り上げて店に入る。いかにも観光地のお土産屋の店内には、地元みそは高山のみそと神岡のみそがあった。神岡の方が1キロ入りだったのでそっちにしたが、値段は740円だ。賢明なる読者諸君にはもうわかるだろう。この価格設定は700円+消費税35円の釣り銭手間省きの為の切り上げの740円だ。実質的値上げこれを幸いと余計にもうけしているのだ。汚い。実に汚いやり方だ。こんなことが許されるのは絶対におかしいぞ。消費税表示の変更に伴い、ちゃんと700円税込みにしろ。店番の茶髪ヤンキーねーちゃんに金を払って袋に入れてもらいバイクに戻る。となりに一時期一世を風靡したNSR80が止まっていた。ライダーのにーちゃんが標高の関係でかキック始動に難儀している。やっとかかって彼は甲高い音を立てて走り去っていった。ああゆうバイクもええなあ。

さてみそは買ったし、あとは帰るだけだ。

高山でタイムリーで午後の紅茶を飲んで山崎のスナックゴールドを食って、祭りの騒ぎに巻き込まれないように退散した。帰り道、下呂でも金山でも祭りをやっていたから、高山だけじゃなかったようだ。

天気の崩れは全くなく、帰ってきても晴れたままだった。

本日の出費

温泉500円

ざるそば500円

神岡みそ740円

午後の紅茶147円

スナックゴールド105円

走行距離 23400キロくらい

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