Hercules Operation(ハーキュリーズ作戦)の始まりは5年前、2005年まで遡る。
とあるバイク雑誌、ツーリングGOGOだったか、ジバングツーリングだったか忘れたが、まあ、そのたぐいの雑誌だった。そこに掲載されていたツーレポで使われていたバイクが、HONDA CBR600RRだった。
当時、600ccの排気量は実に中途半端だった。特異なシステムを持つ日本の免許制度において、市民権を得るのはやはり限定解除上限の750cc通称ナナハンであり、それを150ccも下回るバイクに見向きをする消費者がいるはずもなく、メーカーも主力商品として売り出す事はなかった。しかし、閉鎖的な日本の自動車および二輪市場に不満を待つ海外のメーカーからの外圧により、自動車では33ナンバーの税金制度の改正や、オートバイの免許制度の改正が行われ、上限750の規制は事実上、崩壊した。そして急激に増加する大型免許のライダーに呼応するように、バイクの販売排気量の変化が急速に進んだ。すなわち、80年90年代に主役であった400ccのバイクから、大型バイクへと交代になったのだ。そしてその大型バイクもまた、二極化の方向に進む。すなわち、1000ccを越えるまさしく大型と、そこまで大きくないが中型免許ではない大型の2種類である。そして、そのバイクの排気量が、ヨーロッパで大きな市場を形成するいわゆるSS=SuperSportsのクラスのひとつであった。この排気量が600cc、そしてHONDAのCBR600RRは、そんな流れを汲む、輸出モデルとして販売されていたCBR600Fの後継車であった。
CBRと言えば、忘れる事はできない、CBR750の存在である。当時、全盛を極めていたレーサーレプリカとは違う方向性、MAN&MACHINE INTER/ACTIONをテーマにした先進のフルカバードボディをまとったその姿は、新世代のオートバイを予感させた。しかし、その直後に登場するKawasaki Zephyrは、多くのユーザーの潜在的願望が、オートバイにオートバイらしさを要求していたことをはっきりさせた。過度的なスタイルだった事を証明してフルカバードボディのCBR750は消滅し、ネイキッドと呼ばれるフツーのバイクが市民権を得た。CBRからCBと、原点回帰したのも時代の流れだった。
そんなこんなの時代背景、CBR600RRとの出会いは、CB1000を乗って10年、2回目のフルモデルチェンジとなったSC54型CB1300に乗り換えたのが2004年、その翌年の事であった。

人に言わせると、典型的なB型らしい。すなわち、理論整然とした行動より、感性的直感的な行動をする。そんな性格がなせることだったのか、漠然としたCBR600RRへの思いは次第に具体的になっていく。まともに考えたら、どうにもニーズに合っていないだろう。オートバイの乗り方にはいろいろあるが、完璧にツーリング主体、バイクに乗るのはバイクに乗るためであり、そのために必要なのは、長距離を走っても疲れないポジション、お尻が痛くならない厚いシート、荷物がたくさん載る事、航続距離が長い事、燃費がいい事である。現行のCB1300はその条件をほぼ満たしていた。それに対してCBR600RRは、キツ前傾ポジション、ケツが痛くなりそうな薄いシート、荷物は全然載らないし、航続距離も長くないし、そもそもハイオク仕様のエンジンはガソリン代も高い。そしてそれ以上に、CBR600RRがレースのためのバイクであるという事だ。すなわち、運転技術があるライダーのためのバイクなのである。地蔵峠最速を争う連中が乗るバイクなのである。本宮山に集まるアクセル全開でコーナーをヒザスリしながら駆け抜けるライダー、岩屋ダムに集まるアクセル全開でコーナーをヒザスリしながら駆け抜けるライダー、そういったライダーのためのバイクで、マスツーリングでおいてかれるヘボライダー、20年もバイクに乗ってるくせに未だにUターンができないヘボライダー、木曽駒高原で立ちゴケするヘボライダーにはどう考えてもふさわしくないのだ。うるせなーどうせヘボだよクソ。しかも、このオートバイをCB1300の後継としてではなく、もう1台のバイクとして欲しいと考えていたのだから、現実的にありえない、まさしくユメの話でしかなかった。車検付きバイクの2台体制なんて、どう考えてもユメユメユメのユメ。何度も言うけどユメユメユメのユメ。
しかし、ユメでも努々ユメであってもユメ見る事は許されるだろ。こういった感性だけで何となく欲しいとか、ああしたいこうしたいと考えるのは毎度の事で、例えばランボルギーニディアブロSVが欲しいとか、ポルシェカレラ4が欲しいとか、ハーレーダビットソンスプリンガーソフテイルが欲しいとか、Nikon D700が欲しいとか、MacBook PROが欲しいとか、あるいは佐多岬から宗谷岬まで走るだけのツーリングがしたいとか、阿蘇山で一週間くらい滞在ツーリングしたいとか、モンキーで北海道一周ツーリングがしたいとか、行きはトワイライト、帰りはカシオペアで北海道旅行に行きたいとかいろいろ考えるんだけど、結局、熱しやすく冷めやすいこの性格、のど元過ぎれば熱さ忘れる、ハーレーも一時期はマジで欲しかったけど、今は、ハーレー、ああ、いいかもねー、程度だし、突拍子もないツーリング計画も、そのうちねー、となってるし、そんな性格にも関わらず欲しい欲しいと思い続けて5年も続いてたのはなかなかないんだよな。
カタログがあるんだよ、05年モデルから10年モデルまで全部揃ってる。インターネットで取り寄せたんだよ。ほぼ毎晩見てたんだよ。ことあるごとに、GooBikeのネット検索をして、04年モデルの中古を探してた。人気車種なんで、当時の中古車市場でも価格は、だいたい78万から、安いのがたまにポッと出るんだが、それでも70万を切るのはまれだった。気に入ってたカラーは04年モデルの赤黒で、アンダーカウルが灰色のが良かった。05年モデルになるとアンダーカウルが黒になって、今ひとつ気に入らない。

 

ある日、GooBikeで安いのが出ていたので見に行った。天白のとあるバイクショップに見に行った。モデルは04年、価格は68万円だった。安い価格には訳があって、タンクにちょこっと傷がついてた。しかし、マフラーとステップが改造してあって、その点はちょっといけてた。エンジンをかけてもらって、またがってみたりもした。うわさ通りに足付きが悪かったが、CBほどではなかった。しかし、いろいろ検討したところで勿論買えるわけがない。しかも、財務省からは一言、「中古車を買うなんてありえない」と一蹴されたし。でも新車は05年モデルのアンダーカウルが黒いのなんでいやだった。それから時を前後して、近所のバイクショップに出ていた事もあった。でも見に行ったらすでに売約済みだった。これも70万切ってたからな。その後もマメにGooBikeをチェックしていたが、70万円台のモデルはそこそこ出ても、70万を切るモデルはほとんど出なかった。
そんなこんなで月日は流れ、2007年、CBR600RRはフルモデルチェンジした。中身も外観も変わった。正直なところ、新車を買う事など想定外だったが、それでもHONDAのサイトをチェックして、どう変わったのか隅から隅まで読んだ。内容的にはすごく良くなっていたが、カラーがいまいちだった。カウルにグレーの横T字の部分が気に入らなかった。価格も想定外に高かった。結局、もし、ありえないが、買えるとしても、中古だよな、という事になり、またまたGooBike検索の日々が続いた。新型が出ても、旧モデルの中古車市場はさほど下がらなかった。相変わらず70万を切るモデルはなかなか出なかった。
08年になって、カラーリングがマイナーチェンジされた。カタログを見た限りではあまり変化がないようだったので、相変わらず新車はノーマークだった。財務省からの「中古はありえない」も相変わらずだった。ところが、ある日、大須にショッピングに出かけたら、古着ショップの前に白黒の新型が停めてあった。

   

一目見て痺れたね。チョーカッコいいじゃん! 新型いいじゃん! このとき初めて、新型が想定の範囲内になった。それからは新型をGooBike検索するようになった。価格予算は一気に上昇したが、ここである事に気がついた。年式型落ち新車の存在である。バイクショップが販売用の在庫に確保したモデルで、しかし、予想に反して年度内に売れなかったモデル、そういうモデルは新車なのに安い価格設定で出ているのだ。そのモデルを毎晩検索した。で、ある時、名古屋市内のバイクショップで見つけたのが07年型赤黒89万円のモデル。見に行ったよ。またがったよ、足付きよくなってたよ。軽かったよ。カッコいいよ。欲しいよ。見積もりしてもらったよ。大サービスで96万にしときますよと言われてグッときたよ。しかし、物事はそう簡単に進まない。そう、その後に襲来したのはリーマンショックだった。それまでのなんちゃって好景気に湧いていた日本は一気に極寒のシベリアになった。まさしく、急降下爆撃機のような、ほとんど墜落のような日本経済、大手企業の血も涙もないリストラが断行され、街は失業者であふれ、中小企業はばったばったと倒産し、テレビは連日のように派遣ぎりを題材にお祭り騒ぎをしていた。仕事は無くなり、工場は閉鎖され、すべてが音を立てて崩れた。がらがらどっしゃーん。終わった。なにもかも終わった。はははのは。気分転換に北海道に行って、全行程雨でぼろくそになって帰って来た。ぼろくそになった身体にむち打って職安に行って仕事を検索しても全然なかった。ホントになかった。ホントないよ。全然ない。マジ、ない。検索機の前で呆然自失、血の気が引くのを感じたね。ホントに仕事がなかった。ナッシングアットオール。わずかな求人に応募しても、ああ、おっさんはいらないですよ、ああ、未経験者はいらないですよ、ああ、ヘンタイはいらないですよ、ああ、Uターンで立ちゴケする人はいらないですよ、ってほっといてちょーだい。もうオレには夢も希望もなかった。廃人のようになって、もはや朽ち果てるのを待つだけになっちまったのさ。はっ、無様なオレを笑ってくれよ。
そんなオレの姿を見た妻は遂に決断したのだった。「アンタさー、もし年内に仕事決まったらさー、買ってもいいよ、CBR600RR」「マジっすか!?」「アンタ、アタシを誰だと思ってんの? 女に二言はないよ」この一言で完全復活、オレはマジになって仕事を探したぜ。勿論、ちゃんと長続きできるちゃんとした仕事を探したのさ。そして、遂に採用が決まったのだ! チャチャチャチャーン! 仕事を手に入れた(ゼルダの伝説神々のトライフォースの効果音風でよろしく)妻びっくり、当の本人もびっくり。まさか年内に決まると思わんかったもんな。マジで年越すと思ったもんな。
こうして、CBR600RR購入作戦は本当に発動したのであった。
ターゲットは勿論最新の09年モデル、そして09年モデルには遂にABSモデルもラインナップされた。どっちにするか迷ったが、YouTubeで見た、ABSモデルのウエット制動デモ動画

 

あまりにも見事な止まり方に感動してABSモデルを買う事を決意、トリコロールカラーが派手なのはご愛嬌という事で、さっそくGooBikeの無料見積もりを行った。その結果は以下の通りだった。

Y社
[見積り明細]
車両本体価格(税込み):1,039,000円
配送料   :21,000円
非課税分諸費用計   :24,950円
課税分諸費用計  :36,750円
支払合計      :1,121,700円
M社
[見積り明細]
車両本体価格(税込み):1,028,000円
配送料   :25,000円
配送料特別値引き   :-5,000円
非課税分諸費用計   :25,280円
課税分諸費用計  :47,250円
支払合計      :1,120,530円
G社
[見積り明細]
車両本体価格(税込み):1,039,000円
車輌保証整備費(*1)   :29,400円
ご自宅配送費(*2)   :15,000円
<非課税分諸費用>
自賠責保険(37ヶ月): 17,780円
重量税(新規): 7,500円
証紙代: 1,620円
G防犯登録: 1,050円
非課税分諸費用計   :27,950円
<課税分諸費用>
登録代行費: 26,000円
課税分諸費用計  :23,650円
支払合計      :1,135,000円
M社が一番安い。
ETCの見積もりももらうが、約5万円、高いなー、どうせ使わないからいらないか。

2009年12月3日、2010年モデルが発表された。

   

マイナーチェンジでカラーが2色だけになった。その2色にどちらもABSが選択出来るようになった。どうせなら最新型がいいので2010年モデルにしたい。改めて見積もりをもらう事にする。高速無料化はやらないようなんでETCはやっぱり欲しいが、やっぱり高いので止め。とりあえず、カタログ請求する。
12月6日、HONDAのウェブで注文したカタログが届いた。ほとんど2009年モデルのカタログの使い回しな感じだな。09モデルとの違いはカラーのみで、10年モデルの方が明るくていいような気がする。

年が明けた。2010年になった。
1月10日、2010年モデルを見てきた。蟹江のHONDAドリーム店にトリコロールも赤黒もあるようなんで、見に行ってきた。意外だったのは赤黒がなかなかイケてたこと。やはりバイクは実車を見ないとわからない。これは迷う。しかし、2010年モデルのトリコロールは2009年モデルより落ちついたと言うか、好みのカラーだったので、やっぱりトリコロールカラーしようと思う。

Goobikeでもらった2010年モデルの見積もりは以下の通りになった。

Y社
本体     1050000円
配送費用   19000円
非課税諸費用 24950円
課税分諸費用 36750円
合計     1130700円
H社
本体     1101400円
配送費用   ?円
非課税諸費用 26380円
課税分諸費用 75090円
合計     1202870円
T社
本体     1037400円
配送費用   22155円
非課税諸費用 25280円
課税分諸費用 42000円
合計     1126835円
M社
本体     1028000円
配送費用   20000円
非課税諸費用 25280円
課税分諸費用 47250円
合計     1120530円
H社は一番高いので除外。
Y社はネットでの評判が心配(ググッったら「Y社 悪い」ってのが出て来た)
T社かM社当りにしようかと思う。
どちらにしても通信販売になるので慎重にしないとな。

ちなみに、今回初めて通信販売を使って、遠方のショップから買う事にしたんだが、「バイクは近所で買え」の鉄則を破るのは理由がある。それは簡単、安いから。それだけ。どうせメンテは自分でやるか、手に負えないのはなじみのバイク屋(というか、修理屋さん)に頼むからいいだろう。

1月18日、競合車種のチェックをしに、HONDAドリームを訪問した。
ちなみに、ハーレーは昨年、試乗会に行ってみたが、確かに面白いバイクだけど、今ひとつ踏ん切りがつかないな。振動がすごいし、ブレーキ効かないし、ポジションに違和感があるし、カッコいいんだけど、やっぱりなんか違う。
ドリームで見たのはまずはVT1300CXでチョークールだった。メチャクチャカッコいい。はっきり言って欲しい。でも大きすぎてガレージに入らないので無理だ。それに、チョークールだけど、ツーリングには似合わないモデルだな。
次にシャドウファントムだが、これもカッコいい。VT1300よりは現実的。だが、やっぱりアメリカンはでかいもんでガレージに入らない。それにこのモデルはなんとチューブタイヤなんで、パンクした時が大変なんでちょっといかんな。


というわけで、結局当初の予定通り進める事になった。まあ、デキレースみたいなもんだが、買ってから競合車種を見てちょっと複雑な気持ちになるより、あらかじめしっかりリサーチしておいた方が正解だよな。ちなみに、競合車種って、フツー他社のSSだろ、っていうツッコミはなしね。

さて、見積もりをもらったショップに、具体的な契約手順を聞くと、返信メールが来たんだが、どの店も先払いだと言ってきた。

以下、メールの内容の一例。
『ご購入の手順ですが、お振込みにてご入金をいただいてからの車両手配となります。
お振込みをいただいた後、免許証のコピー、住民票(3ヶ月以内の物の原本)を郵送いただき、納車の準備が出来次第、車両配送の手配をさせていただきます。
納期については、ご希望の車体色によっても異なりますが、車両発注後の返答となります。ご了承ください。』

マジかよ。通信販売なんだから仕方がないかもしれんが、現物も納車されてないのに金だけ先によこせというのはいかがなものか。こっちは店頭に行く事もないし、そこの店員と会話する事もなく購入するんだから、そこまで信用しちまっていいのか? モノが来なかったらどーすんだ。2万や3万の買物じゃないぞ。内金は払うが、残金は納車時にできないかと問い合わせたら、OKの返事が来たのはT社のみ。幸い、T社が第一候補だったので、どうやらここで決まりそう。

1月23日、念のため、地元のHONDAドリームで見積もりを出してもらう。
結果は1,245,000円。価格差は約12万円で、やっぱり高いな。値引きをもう少しがんばってもらったが、納得のいく金額ではなかったので断念した。ドリーム店側は、アフターフォローを考えて欲しいと言うけど、オイル交換程度のメンテや、車検も自分でやるのでそんなに世話になるとも思えんしな。まあ、それでも本当は地元のショップで買った方が安心なのだが、先立つものがカンケーしてくるので背に腹は代えられん。買うのはT社に決定した。

1月26日、T社に在庫を確認してもらうと大丈夫との返信だったので、内金を振り込んだ。そして、登録用の住民票も郵送した。

1月27日、振込の確認と住民票を受け取ったとの連絡メールが届いた。

1月30日、CBR600RR用のヘルメット昭栄Z-6ホワイトを購入、レーシングワールドで33000円なり。ポイント10%還元セール中なんで、実質は29700円、かなり安いな。ポイントでシールドを購入する。

2月6日、クシタニでCBR用の革ジャンを買った。クシタニ最高峰の革ジャン、コンプリートジャケット。雨に強いエグザリートレザーを採用しているシングルジャケットとどちらにするか悩んだが、結局革の触り心地がいいコンプリートジャケットを選んだ。ほかにキーホルダー、ウエストバッグを買った。

2月11日、配送業者から連絡が行くとのメールが届いた。

2月12日、配送業者から電話があり、埼玉から走るので、納車は夕方になると言われた。げ、ゆうがた、ですか? その日乗る時間ないじゃん! もっと早くならんかとごねたが、スケジュール上無理(静岡→東海市→港区→オレんち)だといわれ、なるべく早くお願いします、と頼み込む。まあ、関東から運んでくるんだから、高速飛ばしても6時間かかる事を考えれば仕方ないわな。納車の前にもう一度携帯に連絡しますと言われた。

後は待つだけか。

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