近くて遠い富山はほたるいか (前編)

 Clifeなる小冊子に紹介されていた桜ヶ池温泉、展望タワーのあるクロスランドおやべ、そしてチューリップ公園にしろえびの料亭。行ってくればと言うまっちゃんの言葉に甘えて、ゴールデンウィークに2DAYSで行くことにした。当初の予定は5月1日2日だったが、天候が悪いため前倒しに出発することになった。これが吉と出るか凶と出るか、なんにしても昨年の5月の踏んだりけったり2DAYSの二の舞だけは避けなければ。そのためには晴れることが最重要課題である。天気予報では1日の午後から崩れるそうなので、30日から行けば多分大丈夫でしょう。多分・・・。

4月30日(土)

 さて当日。今回は2DAYSということで、荷物は極力減らしたいのでホテルにあるものは持っていかないようにした。必要なのは着替えだけ。あとはカメラ、カッパ、地図、PDAはカシオペアを選択した。ザウルスは野外では液晶の判別不可なので役に立たない。これは本当に困るのでシャープさんなんとかしてくださいよ。MIC1の野外でも見ることの出来る液晶に戻してくれー。話がそれた。で、荷物はタンクバックとシート下にスペースにすべていれたので、後ろにはなにも積まない。2日ぐらいのツーリングにシートバックまで出すのはかっこわるいし。

 出発は渋滞を避けるために6時の予定だったが、起きたのが6時だった。あれま。こんなもんです。飯食って準備して実家のガレージからCB1300を引っ張りだす。スタンバイは万全だ。7時ちょっと前に、自分の家によってまっちゃんとみやこ(雌猫)に見送られて出発だ。

 去年、華山温泉に行ったとき、もの凄い渋滞で、温泉に着いたのが18時だったことがあったが、今回もあり得ないとは言い切れないので、時間短縮をモットーに高速道路を使って出来る限り飛ばす作戦で行くことにした。が、何と言うことだ、春日井インターに入る前の電光掲示板には『小牧一宮間事故渋滞』の無情な表示が光る。おいおい、ゴールデンウィークの土日に事故すんなて。社会の迷惑考えろて。

 文句を言っても始まらないので、インターに入る。最近ETC車両増えてるのかなー、得意げに通過する車を多く見る。バイクは自動発券のところで止まって、券を引き抜いてタンクバックに仕舞って、再び走り出すのであった。とりあえず飛ばす。ぐんぐん加速してピー(自主規制)km/hまでもっていく。前傾姿勢の完全伏せた状態でも風がすごい。こういうときネイキッドモデルは弱い。たまらん、すぐにスピードを落としてピー(自主規制)km/hあたりで巡航する。と、すぐに渋滞になった。ハザードを出して後方車両に知らせる。ハザードを高速道路で出すのがあこがれだったんだー。夢が叶った。渋滞を正直にとろとろ走ってるわけにはいかないので、秘技中央線走りに入った。路肩はパトカーに世話になるので走れないからな。センターラインをわずかに左に走り、渋滞を抜けていく。バイクは全然いなかった。しばらく走ると、渋滞が緩和されてきて、通常走行に戻る。事故現場は既に片付いており、パトカーが2台おまわりさんが何人か調べをしていた。

 飛ばすぜ、カッ飛ばすぜえ。気合いを入れたところに、赤白のCB1300他1台が現れた。パッと見てわかるバリバリチューン仕様、その上ウエアがイエローコーンと来てはかなうはずがない。おとなしく道を譲ることにした。あれ、でもゆっくり走ってるよ。たのむよー、そう言う格好してるなら高速では常に300キロくらい出して走ってくれよー。

 順調に走って一宮ジャンクションにて東海北陸自動車道にスイッチする。その直後に現れるサービスエリアと巨大な観覧車に度肝を抜かれつつ、なんじゃこれー、アクア何とかと言うアミューズメントパークが出来たようだ。でもなんか中途半端。

 かまわず走る続けると、そろそろ寒くなってきた。温度対策は今回一番困ったことに、雨の可能性もあるので暖かく、しかも晴れの日もあるのですぐに涼しくできることを考えて、クシタニGパン風皮パン&ベンチレーション付き春夏ジャケットをレイヤード作戦で来たのだが、考えたら走りながら着替え出来んわ。あほー。性格からいちいち止まって脱いだり着たりする分けないしな。我慢して走ろう。

 天気は今ひとつはっきりしないが、回復する様子なので気にしないで走ろう。山の方は霧がかかって見通しが悪い。しかし、東海北陸自動車道、なんなんだこのスムーズさは! 絶対もっと渋滞すると思っていたんだが。ほとんど交通量がない。みんなゴールデンウィークだぞ、何やってるんだ! 

 東海北陸自動車道も、開発途上なので所々、中央分離帯のない一車線になるのだが、こういうところでとろいのが先頭になると問題である。今回のケースはとろいマーチだった。瞬く間に渋滞になり、それでもおかまいなしのペースで走る。この根性は大したもんだ。途中で所々にあるゆずり車線でようやくかわし、再びカッ飛んでいく。

 こうして1時間半で飛騨荘川インターに着いた。ここの料金所は2カ所あるが1カ所はETC専用なので金払う方は渋滞である。こんなところをETC車両が自慢げに通過していくのを見ると何だかむかつく。こっちだってハイウエイカードがあるぜ。料金所のおじさんに渡そうとしたら財布の中にあるはずがないじゃん。慌てて現金で払った。かっこ悪かった。やれやれ、インターを出て道の駅荘川で休憩。トイレと今後のルート確認。出発してすぐのスタンドでガソリンを補給した。東海北陸自動車道の開通していない区間は下道の国道156号を走る。途中のトンネルや荘川桜のところで渋滞したがおおむねスムーズに通過した。一番の観光地の白川郷も渋滞なく通過、このまま156号を走ることも考えた。でもやっぱり時間短縮のため白川郷からインターに入る。

 10時ちょっと前に福光インターを降りた。インターネットのハイウェイナビゲータの時間とほぼ同じだ。インターを降りたすぐに桜ヶ池の看板があったのでそっちへ進む。辺りは広々とした田園風景で、耕耘機がゆっくり動いている。なんかいいなこういうの。親切な案内標識のおかげで、道に迷うことなく桜ヶ池に到着した。一大リゾート地帯だ、というか、要するに森林公園みたいでキャンプも出来るようなアウトドアレジャー施設なのだろうな。池は貯水池のようで、ダムでせき止められていてその上を走って駐車場に着く。

 困ったことに暑くなってきた、これから温泉なのに。で、どこに温泉があるのだろうか? バイクを止めたところに地図があったので見た。するとちょっと行ったところに『露天風呂』とあったので多分これだろう。本当に温泉なのだろうか、ちょっと心配。手ぬぐいとソニーの小型デジカメだけ持って露天風呂に歩く。あちこちに芝生の広場があって、カップルやファミリーがランチシートを敷いていた。かなり歩いて気がついたが、バイクで来れたな。まあいいか。ソフトクリームの店があって、カップルが買っていた。うーむ、風呂から出たら買おうか。歩いていくと、事務所があって、それを越えると野外ホールみたいな建物があり、さらに歩くとようやく温泉の建物に着いた。ひっそりとしていて、こじんまりとした施設で、今日、休みか? 入り口まで行って説明を読んだ。

 『風呂に入る人は事務所で鍵を借りてください』

 何ですと? 事務所って? 通過したあの事務所のことか? また戻るんかい。やれやれ。仕方がないので、引き返した。事務所に行くと係の人がいたので温泉に入りたいんですけどと伝える。準備できてたっけ? 女の人が奥の人に聞いて大丈夫ですと答えが返ってきたので良かった。で、お金を払って鍵をもらった。再び温泉に行く。やっとこさ鍵を開けて中に入る。向かって左が男湯だ。準備できてるとか何とか言ってた割に女湯からは人の声が聞こえる。靴もあるから女湯には先客がいるようだ。男湯に行くと誰もいなかった。貸し切り状態です。しかし、小冊子に紹介されていた写真とはかなり違うぞ。内湯も外湯(露天風呂)も小さい。思いっきり小さい。2人入ったら満員状態の風呂。しかし、露天は風呂の面積に比べてその周囲が異常に広い。これはここで裸踊りでもしろと言うことなのでしょうか。文句を言っても仕方がないのでまず内湯から入りそれから露天に入った。露天は超絶的に開放的でほとんど目隠しなし。ちょっと高台にあるから覗かれることはないだろうが、もし女湯がこうだったら隠し撮りするアホが出てくるんじゃないか。

 騙されたような気がしないでもないが、風呂を出て、一応確認したら温泉の成分分析表は掲げてあった。ちょっと暑い。お茶が飲みたいので服を着て出る。女湯はまだ入っていた。さすが女の風呂は長い。事務所に鍵を返してバイクに戻る。お茶を飲んで一息ついて、次の目的地に移動することにした。バイクを出すが、ダムから見える池がきれいなので、ちょっと停めて何枚か撮影した。ニコンのカメラでツーリング写真というシチュエーションに陶酔。ミノルタα使いだったが、なんだかんだ言ってカメラはニコンがあこがれでしょ。

 次の目的地は展望タワーのあるクロスランドおやべだ。地図を確認してルートを調べる。そんなに遠くないのですぐ着くだろう。着た道を行ったん戻る形になり、それから国道を走り県道に乗り換えてすぐにタワーが見えた。いやー、こんな田んぼだらけの土地にあんなものを建てるのは勇気がいっただろうなあ。最初に考えたのは誰なんだろうか。

 駐車場は結構広かったが、さすがゴールデンウィーク混雑している。開いているところを見つけてバイクを止めると、カメラを持っていそいそとタワーに向かう。が、タワーの他にすごいものがあった。陸上自衛隊のバートルヘリコプターだ。実物が置いてあるよ。すごいでかい。むかし、タミヤのプラモデルで欲しかったんだよねー、バートル。シコルスキーやヒュイコブラは作ったんだけどなあ。写真を撮ってからいよいよタワーに向かった。しかし、入場券はタワーの入り口ではなく、もっと前の方にあった。なんと。戻ってそこへいく。戻ってばっかだ。タワーの券を買う。他にもあるみたいだが、今回はタワーだけでいいだろう。買ってタワーに向かう。ちょうどエレベータが来ていたので乗り込んだ。数秒で地上100メートルのところまで来た。シースルーなので周りがよく見えるエレベーターだが、タワーの骨組みもよく見えた。

 展望台では映画の小物を展示してあった。スタートレックのレイガンやら、いろいろあったが、欲しかったのはバックトゥザフューチャーの時計台保存運動のチラシ。あれは欲しかったなあ。

 エレベーターを降りてバイクに戻る。天気は上々で、タワーの周辺の芝生広場には、ファミリーやカップルが弁当を食ってる。うまらやしいなあ。コンビニで弁当でも買ってきてここで食うという作戦もあるなあ。時刻は間もなく12時。隊長、決断を! んー、チューリップ公園も期待できるのでそこへ行ってから考えよう。

 というわけで出発する。少し行ったところにコンビニがあったのでそこに寄った。バイクを止めて店に入る。おにぎりを買おうと思っていたが、そこに並んでいるますのすし(個食タイプ)を見て、おお、そういえばここは富山、富山と言えばますのすし、ますのすしを食わずして富山を語るなかれ、ますのすし万歳状態になり、むんずとそれをつかむと、いそいそとレジに向かった。でもおにぎりも買った。お茶も買った。お茶はおまけ付きのイエモン(解散したイエローモンキーではない)漢字でないぞことえり。 伊右衛門を買った。しかし、この時この先に悪夢が待っているとは思いもしなかったのだ。

 チューリップ公園で食うつもりだったが、腹減ったのでもう食うことにした。初めにおにぎりを食った。昆布入りのだ。こういうのが良いとは歳をとったのう。続いて、いよいよますのすしだ。外のビニールを取るのに失敗してびりびりになってしまった。適当に折り曲げてバクッと食った。

 一口食ったますのすしの断面には赤いものがべっとり付いていた。

 なんじゃこれ。

 そして口の中の鉄臭いイヤーな味。

 あれ、この味は・・・。

 血だ。

中編につづく

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