「開廷します」

「最初に検察側から起訴状の読み上げがあります」「被告人は前へ」

「それでは起訴状を読み上げます」

「被告人keiichi_wは、平成21年8月17日、配偶者の再三にわたる制止にも耳を貸さず大型自動二輪車で県外へ外出、同日午後2時32分、塩尻市大門泉町、高出交差点付近国道20号線で路上に放置されたトラック車止め用の角材に接触、後部タイヤおよびホイールを損傷させて帰宅し、修理費用97104円の損害を被ったのであります。失業中にも関わらず、求職活動もしないでバイク三昧、その上莫大な損害を家計に及ぼした事は重大な過失であり、言語道断なのであります。罪状、器物破損、および危険運転家計致死罪、刑法第604条第3項の2」

「被告人は何か言いたい事はありますか」

「ほーほけきょ」

「それではまず弁護側の意見陳述から」

「えー、陪審員のみなさん、被告人は確かに悪い事をしました。しかし、どうでしょう、失業中にたまに気晴らしをする必要もあるのではないでしょうか。ここに、証拠品1号を提出します。これは被告人がよく遊びにいくサイトです。このサイトの管理人は、オートバイを2台も所有して、その上、銀河鉄道999を全巻揃って大人買いした上に、まだ20世紀少年まで大人買いをしているのです。それに比べて被告人は、ターミネーターサラコナーズクロニクルDVDBOXも我慢し、AF-S DX NIKKOR 10-24mm F3.5-4.5G EDも我慢し、iPodも我慢し、新しいカッパもブーツも我慢しているのです。」

「異議あり! 裁判長、このサイトの管理人は被告人とは比較にならないほど甲斐性があり、無職で植木の手入れもしないでゴロゴロしている被告人とは違います。大人買いをしてもまったく問題ないと思われます」

「異議を認めます」

「ではサイトを変えましょう、ここの管理人は被告人と同じ車種の自動二輪に乗っていますが、モリワキマフラーだのカーボンサイドカバーだのグリップヒーターだの金に糸目をつけないカスタム振り、それに比べてノーマルで我慢している被告人が失業中にバイクで走って何が悪いんすか! くそー2000円のメッシュパンツうらやましいなあ」

「続いて検察側の意見陳述です」

「弁護側は被告人の行為を失業中の息抜きと主張していますが、検察からはこの証拠品2号を提出します。このサイトの管理人はD70を使っていますが、毎回毎回、実に精力的に撮影活動をしています。このようにサイトには美しい写真がところ狭しと並んでいます。一眼デジカメを持つなら、これくらいの写真を撮るのが当たり前なのです。にもかかわらず、被告人はレンズやボディを買ってる割りにろくに写真も撮らず、家の猫の写真ばかりとってごまかしている、こんな被告人ですから、自動二輪車の修理代など屁のカッパ」

「異議あり! ヘタなくせに高いカメラやレンズを購入する事と本件は何ら関係性の無いものです!」

「裁判長、これは被告人の性癖に関する問題です。本件の根幹をなす事項です」

「異議を却下します」

「ありがとうございます。このように、被告人は金銭感覚が麻痺し、自分の置かれた立場を認識していません。再犯の可能性もあり、厳重な処罰を与えるべきと考えます」

「では判決を」

「主文。被告人は有罪、懲役90日自動二輪車乗車禁止とする」

 

 

「もう2度とこんなところに来るんじゃないぞ」

「どうもお世話になりました」

「あ、keiichi_wさんです、keiichi_wさんが本日、刑期を終えて釈放されました!」

「このたびはライダーとして、人として決してしてはいけない角材乗り上げをしてしまい、自分の弱さに負け、そしてこのように世間を騒がせ、多くの方に迷惑をかけ、これまでサイトを応援してくれた皆様に残念さを感じさせ、無責任な行動に軽蔑なさったことか、計り知れない、許されないことだと思っています。」

「2度とこのような角材に乗り上げることのないよう、一生の誓いとして固く心に誓います。私の犯しましたこの度の出来事は、私を知る皆様の信頼を回復することはできるものでないことはよく分かっています。ですが、日々感じています後悔の念、取り返しの付かないことをしてしまった自分を反省し、もう一度生まれ変わった気持ちでバイクに乗りたいと思っております」

「現場の梨元さーん、状況はどうですか!?」

「あ、えー、たった今、出所したkeiichi_wさんの会見が終了しましたが、ほとんど一方的にしゃべって終わりでした」

「これではみなさん、納得しませんねえ」

「今日のコメンテーターは国際ジャーナリストの内田忠雄さんです」

「いやこれはいけませんねえ、説明責任を果たしてないと言うか、あらぬことを言われる事になりますよ。だいたい、本人はこの件が無かったらもう一度北海道に行こうと思っていたらしいじゃないですか。まったくもって自覚が無いと言うか、脳みそ使ってないと言うか(以下略)」

と、以上が8月18日から9月24日までに起こった事件の真相です。

 

<2009年9月25日「性懲りもなく馬瀬川温泉」より転載>