伊豆半島温泉三昧SS 前編

出発まで

新しい仕事に就いてはや幾年、いや、幾年たってないけどさ、幾月だな。まあ、何でもいいけど、この仕事、こんなご時世に就けたくらいなんで、正直、ろくな仕事じゃないわけでさ、いわゆる3Kなワケよ。キツイキタナイキケンなワケで、その上、給料安い、休みは少ないと、最悪なワケよ。最悪で最低なんだけどさ、でもね、無職よりはマシ。無職よりは天地の差があるほどマシ。しかし、ひとつだけ困ったことは夏休みが短いんだよ。4日しかないのだよ。おいおい、4日しかないって、ぜんぜん夏休みじゃないよ。最低1週間は欲しいのに、4日だと。がっくりしてたら、まっちゃんが「じゃあ、これからは毎年ゴールデンウィークと、夏休みと、年2回行けば良いじゃん。秋の会社の創立記念日の3連休もいけば、年3回も行けるよ」なるほど、そういう解釈もあったな。いかにも、無いことで嘆くな、有ることで喜べという、素晴らしい、これぞポジティブシンキングだな。じゃあ、ゴールデンウィーク、伊豆半島温泉三昧をもう一度やってみようか。マシンは当然、CBR600RRだ。名付けて伊豆半島温泉三昧SSだ!

が、ここで問題になったのはCBR600RRの積載性である。なんつっても荷物が載らんのだよこのバイク。ツーリングに行くには、タンクバックとシートバックを用意しなければならん。ネットでいろいろ情報を収集し、結局、デグナーの吸盤式タンクバックと2段階に容量を増やせるシートバックを小牧のライコで買った。タンクバックにはレインウェアとパンク修理セット、地図ガイドブック、そしてツーリングプランノートを、シートバックには着替えとPDA、そしてNikonD80とレンズ1本を入れた。入れたらパンパンになってしまった。荷物多過ぎとまっちゃんに言われたが、これでも少なくしたつもりなんだがなあ。

そして今回、2年前の温泉三昧の際にいろいろな失敗をしたことをふまえ、事前に十分な情報収集をしてそれをノートにまとめる、いわばツーリングプランノートを作ることにした。このノートで万全の体制で行けば、行き当たりばったりになることはない。いつも憧れている、内容の濃いツーリングが出来るはずだ。そう、Takemaさんみたいなツーリングだよ。

こうして、カンペキな準備の上で、遂に出発の日が来たのだった。なんだかこれまでになくワクワクです。

5月1日(土)

当日は朝3時30分に起きた。いわゆる、良い子はもう寝てる時間、悪い子はまだ起きてる時間だな。とにかく、渋滞回避の為に、最大限早い時間に出発したいのだけど、まあ、この時期、渋滞を回避するなんて無理なんで、最悪、春日井沼津間予測所要時間の6時間以内に現地入り出来るように、なるべく早く出発しようと思った、と言うより実はコーフンして寝てられなかっただけなんだけどさ。で、一人でトースト焼いて、湯を沸かして用意してあったカップスープを作り、食った。ヨーグルトとバナナがあったもんでそれも食った。バナナは朝食にいいのです。出発前にはいつも気象情報を確認するが、天気は間違いなく晴れなので、もうしない。ブログに出かける旨アップして、出発準備をする。服装だが、天気が良くて暖かくなるだろうが、この出発時間ではまだ寒いので、いろいろ迷ったが、結局、通常の防寒装備を選択する。暑けりゃ脱ぎゃあいいさ。その為の2段階調整式シートバッグだ。

まっちゃんが起きてきて、もう出発準備完了だと知ると、起こしてくれればツナトースト作ったのにーと言われたが、こんな早い時間に起こすの悪かったしさ。荷物は昨夜のうちにバイクに積んであるので、ヘルメットのみを持ち、実家ガレージへ行く。ガレージからCBR600RR/ABSを引っ張り出す。まだ暗い空を見上げれば満月が輝いている。地上に目線を落とせば、新聞配達のスーパーカブが走っていく。走り去った後に訪れる静寂。その静寂を引き裂くCBRのエンジン始動、朝早いのにご近所様ご迷惑をおかけします。では行ってくる。気をつけてと言われて力強くうなづくのであった。

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まずはいつものコスモ石油へ、道路はまったく車通り無し、コンビニの駐車場もガラガラ、いかにも連休初日の早朝だな。19号まで出ると、さすが幹線道路はそれなりに車が走ってる。コスモ石油は満車御礼、行楽に行く車、帰省に行く車、そのどちらでもない車の3種類がガソリン補給中、いつも給油機が左に来るように止めるのだが、満車御礼でいつものルートで入ると反対向きになっちまったので、あせあせと取り回して向きを変えた。そして給油、ハイオク満タンなのであった。給油完了後、渋滞でトイレに行けんといかんので、ここでトイレを済ませておくのであった。何事にも用意周到に万全の体制で挑むのさ。

コスモ石油を出て、春日井インターに向かう。インターの電光掲示板には、すでに蒲郡豊川間渋滞の案内が表示されている。想定の範囲内だな。今回の高速道路、沼津までは、豊田岡崎、蒲郡豊川、浜名湖浜松、掛川、富士川の4カ所、合計3時間の渋滞を想定しているのだが、そのうちの蒲郡豊川がすでに始まっているのだ。インターに入る。料金所だが、最新型のCBR600RRには最新型の高速道路料金システムが採用されていないので、まあ、ようするにETCが予算の都合でついてないので、これまで通りの手動チケットシステムなんで、一般料金所に行かないかんのだが、これがETCレーンの向こう側なんだわ。びゅんびゅん系で来るETC車両をかわして、向こう側に行くのはちょっと大変だったが、へっぴり腰でなんとか自動発券チケットのところにたどりついてチケットを引き抜きタンクバックに仕舞った。

左右後方確認をして高速に入る。道路はすいていたのでSSの本領発揮、アクセルをくいとひねってみたら異次元の世界へ突入、いやはや最新型は何しろすげー。いっぺんやってみたら気が済んだので、巡航速度に戻すと、快調に走って行く。岡崎辺りで東の空には太陽が顔を出し、日の出が拝めて、実に絵的にいい構図なのだが、高速走行中では写真撮影不可能だった。shoさんの様にテクのある方なら走り撮りするんだろうけど、未熟者には無理なのであった。タイヤの縁はまだイボもヒゲも残ってるし。

心配した渋滞もなくスムーズに進む。だが反対車線はそうでもなくて、すでに動きも取れない渋滞状態、トラックも何台かいて、この時期の運ちゃんは大変だよな。自分は仕事なのに、遊びに行く連中のせいで時間がかかってしょうがない。すんません、自分もその一人です。

蒲郡豊川の渋滞10キロの表示案内通り、音羽蒲郡インター付近から徐々に流れが悪くなり、詰まってきた。秘技、掟破りのすり抜け作戦で先に進む。HONDAの最新型ハイブリッドCR-Zがいた。この車カッチョエーよ。スカイラインGT-Rもいた。どんだけ速くても渋滞では意味無し。ハーレーのトライクもいた。トライクは渋滞でもすり抜け出来ないから不便だな。そういえば、真夏晴天炎天下でゴールドウィングで渋滞路にはまって、脱水症状で死にそうになったという話を聞いたことがあるが、この時期ならそうんなこともないだろうけど、トライクのみなさん注意しましょう。

豊川を越えると、流れが多少回復、渋滞を抜けたら休憩するつもりだったが、浜名湖SAがおそらく満車かそれに近いと読み、手前の新城PAで休憩した。バイク駐輪場には静岡ナンバーのマクザムが止まっていた。イエローコーンのハンドルカバーがカッチョエーぜ。トイレを済ませて、陽が当るところに立ってると暖かくなってきた。走ってるとまだ寒いもんな。暖かいものを飲むか迷って、次にしようということで出発する。

     

読み通り、浜名湖SAは満車だった。どんなもんだい、オレって鋭い読みだよなーと自画自賛しつつ、想定していた浜松辺りの渋滞は、流れが悪いとはいえ、渋滞になるほどでもなかった。この先、牧の原SAも混雑満車が予想されるので通過したら、駐車場は半分くらいしか埋まってなかった。しまった寄ればよかった。まあいいや。しょうがないので日本坂PAで休憩した。まだ寒いので自販機のホット紅茶を飲もうとしたら売り切れだった。仕方がないので小岩井ミルクコーヒーを飲んだ。ここのPAの建物にはでかい魚のオブジェがあるのだよ。おもしろいね。

日本坂を出たら渋滞案内表示に清水富士12キロ。12キロくらいなら大丈夫だなと思っていたら、次の表示では14キロ、その次は16キロと急激に渋滞が伸びている。うーむ、やばいな。やばいけど仕方がない、渋滞に突入したら、またしても掟破りのすり抜け作戦でどんどん進む。さっき抜かしたCR-Zがまたいたよ。同じ車なのかな。キリンで有名な由比は満車で通過。富士川SA付近から富士山が見える。素晴らしいぞ。晴天に恵まれているので本当によく見える。絵的に実に素晴らしい構図なのだが、高速走行中では撮影不可能だった。shoさんのようにテクがある方なら‥‥以下略。

ちなみに、この付近の東名高速は国道1号線と並走するのだが、どう見ても国道1号線の方が流れが良いのですが。

まあ、それでも予定時間を大幅に短縮して沼津に近づいた。最後の休憩を愛鷹でとり、沼津インターから高速道路をおりた。4時間くらいで走破したことになるな。やっぱり早く出て正解だった。早起きは三文の得と言うからな。昔の人はいいことを言ったもんだ。

この後のルートは、伊豆縦貫道路を使うのだ。グレンダイザー的に言うと、秘密ルート7だな。ところであれって、1から7まであるそうだけど、7と5しか知らんな。ほかのルートってホントにあんのか。で、その伊豆ガイドブックに載っていた情報の伊豆縦貫道路だが、2009年に一部開通し、実験的に無料開放されている道だ。そっちに進めば沼津市内の渋滞を避けることが出来るのだ。沼津料金所を、伊豆縦貫道路方面に行くと、工事中の半完成な真新しい道路が現れた。ぎゅいーんと快調に走って行くと、どーんと富士山が目前に見える。絵的に素晴らしい構図なのだが、高速走行中では撮影不可能だった。Shoさんなら‥‥以下略。

快調にショートカットして三島市を経由して1号線に突き当たる。道路はここまで完成してる。ここからは1号線を使うのだが、いきなり大渋滞で全然動かない。結局1号線で渋滞するわけだ。掟破りのすり抜けをして先に進み、136号線で下田方面に向かう。

136号線も交通量が多く流れが悪い。とにかくまず給油が必要なので、カードが使えるコスモか出光を探しながら走るが、ありそうにないなあとあきらめかけたところで反対車線に出光発見、するりと入った。バイクを止めてハイオク満タン、給油のおねーちゃんが、ライト片方切れてますよ、と親切に教えてくれたが、いえ、これはこういうのなんでと説明、給油を済ませてお礼を言って国道に戻ろうとしたが、反対車線に出ないかんのに交通量が多くて全然出れません。こりゃこまった、すると見るに見かねて店員さんが誘導してくれた。すんませんねー給油待ちの車がいっぱいで忙しいのに、なんせ未熟者なんで。

バイクの給油が完了したので人間のお腹の補給なんだが、今回の件で反対車線恐怖症になってしまったので、進行方向にあるコンビニを探すのだが、こういう時にはなぜかないな。反対車線に現れるコンビニを見送って、ようやくファミマ発見、駐車場にバイクを止めて、缶コーヒーとコロッケパンを買って食う。お腹が落ち着いたので、今後の作戦を検討する。どの温泉に入るべきか、吟味に吟味を重ねた結果、近くに「めおと湯の館」の案内が出てたのでそこに決定した。全然吟味してねーじゃん。予定では「湯らっくすのゆ」に入るつもりだったんだけど、この時間まだやってないし。

で、看板に従って曲がったら、すごく狭い道で、完全住宅街なんですが、マジでこんなところにあるのかよ。ビビりながら進んだら、果たしてそこに温泉はあった。いかにも公共の温泉施設という感じの温泉。開店10時まではまだちょっと時間があるので待つ。玄関には朝早いじーさんばーさんが集結している。待っている間、CBR600RRを見ながらじーさんばーさんの会話「わしも乗っとった、ナナハン、ツナギもバッチリ着とった」「そうかね」「まあ今は無理だわなー着れんで」「服が着れんか」「ヒザが入らん」いや、服が着れるとか着れんとかの問題じゃないだろ

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10時になったので開店したので入った。下駄箱が異様にでかいのでブーツも楽々入った。受付で入浴料を払ってチケットをもらい、男湯に行く。脱いでロッカーに荷物を突っ込んでお風呂場へ。体を洗ってお湯に浸かると気持ちええー。これといった特色のないフツーの温泉施設なんで面白みはないが、伊豆最初の湯はこんなもんだろ、高速道路距離にして240キロ走ってきた疲れを洗い流して出た。出たら暑くなってきた。建物を出るとき、チケットを受付に渡すように案内があったので、何でだろうとその前にチケットを見たら入館時刻が印字してあった。ここは3時間500円なんで、3時間を越えると延長料金がかかるのだ。何かマンガ喫茶みたいだな

バイクに戻って出発する。国道まで出たら、また反対車線なんで出るのに苦労した。「反射炉」という看板があって、温泉にもポスターが貼ってあったので気になり、そっちに曲がって行く。するとちょっと走ったところにそれはあった。文化遺産の観光名所みたいだ。バイクを止めて入口に行く。入場料100円を払い、中に入った。反射炉の資料館を抜けると、実物の反射炉がある。結構でかいな。でももっと廃墟みたいなものを想像していたので、意外にきれいなのがつまらんかった。でもたいそうなものを見せてもらいました。

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バイクに戻って、暑いので1枚脱いだ。シートバックを1段伸ばして増量化し、脱いだ服を入れる。反射炉を後にして国道に戻って、更に南下する。

次の温泉は修善寺温泉だ。伊豆に来た修善寺温泉は避けて通れないからな。混雑する136号線を進む。後ろから反対車線をかっ飛ばしてすり抜けしてきた黒のZZRとR1が更に先へカッ飛んでいく。事故るなよー。

修善寺温泉まで来た。歓迎の看板を横目に、サークルKの前を通って温泉街道に進むのだが、さすがゴールデンウィーク、観光客と車の数がハンパじゃないな。目的の温泉は「筥湯」なんだが、バイクをどこに止めれば良いのか、流れに乗ってどんどん進んで行くと、2年前に入った湯の郷村まで来てしまった、これは来過ぎだ。よく見たら湯の郷村はやってないし、潰れたみたい。苦手なUターンをしてふたたび温泉街道をぐるぐる回って、ようやく2周した時に「筥湯」を発見、そっちに曲がってとなりの有料駐車場にバイクを止めようとしたら「温泉だけ? 観光もする?」と受付の昔おねーちゃん「温泉だけ」「じゃあ、温泉前に止めれば良いよ、番頭さんに言ってね」ということで、タダで止めさせてもらった

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手ぬぐいを持って温泉に入る。番頭さんにバイク止めといて良いですかと尋ねるといいよとのこと、入浴だけだよと念を押されたけど。で、発券機で入浴料350円を払って券を番頭さんに渡して男湯の暖簾をくぐる。最近できたばかりの温泉らしく新しくてきれいだし、檜なのかな? においもいい。温泉らしい気分も盛り上がる。こじんまりした脱衣所、先客は4人くらいいた。かけ湯をして湯につかる。天井が高いのが良いね。湯煙が天井の開放部から日が射すのと相まって温泉ムード満点。気持ちいい。グニャグニャになりそう。

温泉を出たらますます暑くなってきて、革ジャンの下はついにTシャツ1枚になった。うーむ、こんなに暑くなるとは思わなかったな。番頭さんに湯の郷村のことを聞いたら、1年半くらい前に廃業したらしい。そりゃこっちにこんなきれいな温泉があれば客はこっちで入るわなあ。でも2年前に来た時にここの存在を知らなかったけどさ。

修善寺を後にして、次の目的地は2年前の因縁の温泉、河鹿の湯だ。2年前の伊豆ツーリングで2回も来たにも関わらず、営業時間が合わなくて入ることが出来なかった温泉、ここは絶対外せないぞ。今回は時間的にも営業時間にぴったりのはずだ。リベンジにメラメラと燃える炎の星飛雄馬状態で136号線を南下、414号線に入って更に南下、湯が島温泉に近づいたら、入口に注意だ。2年前はこの入口がわからなくて苦労したもんな。まさかあんな狭い道を坂を降りるとは思わんもんな。

湯が島温泉への坂道をおりて行く。何か2年前よりもよりいっそう寂れてきたような気がするが気のせいか。まあなあ、伊豆半島は有数の観光地でもあり、同時に観光施設の廃墟の有数のところらしいからな。なんにしても、今時温泉しかないところへ客は来んわなあ。そんなことを考えつつ、川にそって細い道をノロノロ走って行く。あれー、こんなに走ってきたかなあ、おかしいなあ、道を間違えたかなあ、って一本道だよ。心配になってきたところで、見覚えのある橋が現れた。ああ、この橋を超えてすぐだよ。ほら、犬猫温泉の看板があそこにあったはず、しかし看板はなかった。廃業したみたいだね。今時犬猫相手に商売できんわなあ。昔なら出来たんかい。犬猫から入浴料取るんかい。

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河鹿の湯は細い道から更に細い道を降りるとある。ちなみにとなりは有名なノーベル賞作家が執筆活動をしたことで有名な温泉旅館で、同時にフロントの女の子がが全然愛想無しな温泉旅館。河鹿の湯の駐車場にバイクを止めて、開店までちょっと時間があるのでそれまでシートバックの荷物整理をして、間もなく開店というところで、入口の前のベンチに座って待っていたら、扉がガラガラッと開いて中から管理人の女の人が出てきて、「ちょっとどいて」と言うのでベンチからどくと、そこに乗っかって暖簾をかけた。おお、暖簾がかかっているのをはじめて見た。なんか、女の人が温泉に管理人というより、呑み屋のママみたいなんですが、風貌といい雰囲気といい、暖簾を出す姿といい。中に入って、発券機で入浴券を買う。この発券機2000円札対応なんだよ。お札は2000円札と1000円札のみに対応している実にマニアックな発券機。今時2000円札なんて見たことないんですけど、カンドーのあまり泣きそう。

券を呑み屋のママ、じゃなかった温泉管理人のおばさんに渡す。おばさん、こたつに入って正面にテレビという家庭内のんべんだらり状態で対応してくれる。何から何まで常軌を逸した温泉。脱衣所に入って脱いで荷物を棚に突っ込んで、いざ湯船へ、客は他に地元のじーさんひとり、かけ湯をすればあまりの熱さに火を噴きそう。これが伊豆温泉源泉掛け流しクオリティだぜ。すでに湯のクリア度がまったく違ってるぜ。脚からお湯に慣らしていき、何とか入ることが出来たらもうそこはまさしく天界、もうこのままここで一生を過ごしたいくらい、あ、でも熱くなってきたのでいったん出よう。もうひとりじーさんが入ってきてこんにちは。そしたらそのじーさんのよくしゃべること。近所のうわさ話から世界経済までよーしゃべる。総合商社みたいだな。適当なところで切り上げてお風呂から出た。脱衣所でクールダウンし、装備をつけると温泉を出る。呑み屋のママじゃなかった温泉の管理人さんは、入ったときとまったく同じ、こたつに入って正面にテレビという家庭内のんべんだらり状態で対応してくれた。あの人これから閉店時間までずーっとあのままなのか

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それにしても良い湯であった。今回のツーリングの最大の目的のひとつが完遂できて喜びもひとしおである。温泉を後にして国道に戻る。途中、世古の大湯がまだ営業しているかの確認だけしておいた。ちゃんとやってるみたいだな。廃業した温泉旅館の側面に足場が組まれていたが、撤去作業でも始まるのだろうか。

次の目的地が国民宿舎かわづの露天風呂なんだが、ここは3時からで、時間が早いためパス決定。414号線を更にどんどん南下、名勝浄蓮の滝、道の駅天城越え、そして天城トンネルと観光スポットはすべて満員御礼なので通過、旧天城トンネル今回もパスだよ。相変わらず歩かないかん観光地には弱いな。

そこを過ぎると、伊豆に来てここを走らないわけにはいかない伊豆ループ橋、正式名称が入口に書いてあるんだけど忘れた。何とか高架橋だそうです、ってさっぱりわかんないよ。

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くるくる回って河津七滝も通過、湯が野から県道14号線で海岸沿いまで出た。いよいよ東伊豆方面に向かう。135号線を伊東に向けて北上、次の目的地は2年前にさんざん探してわからなかった稲取温泉みやこの湯だ。途中、ウルトラ生ジュースが有名なオレンジセンターはまだ健在、一体ウルトラ生ジュースの正体とはなんだかいまだ不明なんだが、フツーの生ジュースとどう違うのか、今回もその正体は不明のままなぞは闇から闇に葬られたのであった。

そんなこんなで稲取温泉のある稲取港に入った。事前に入念に地図を調べておいたので、今回はわずかな時間でみやこの湯を発見できた。ここの営業時間は3時から、ちょっと早く着いたので、土産屋でも見ようかと思い、バイクを温泉の前に止めたら、貼紙に気がついた。そこには営業時間は4時からと書いてあった。なんですと? 4時だって? だめだこりゃ。あと1時間も待つのは無理だな。断腸の思いでエンジン再び始動、後ろ髪を引かれる思いで稲取をあとにするのであった。まあ、単に、ウチの飼い猫と同じ名前だから入ってみたかっただけなんだけどさ。

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仕方がないので次の温泉に向かう。なんてったって伊豆半島は温泉の宝庫なんだから、犬も当れば棒が歩くと言うくらいだ。ひとつふたつ温泉の営業時間がどうのこうのって大騒ぎするほどのもんじゃないよ。135号線に戻って更に北上する。目的地は熱川温泉高磯の湯だ。この辺り渋滞を懸念していたのだが、そんな気配は微塵もなく、順調に走っていけるので調子こいてどんどん進んで行ったら、いつの間にやら大川温泉磯の湯まで来てしまった。あれ、これって2年前と同じパターンじゃん。やべえ、オレって全然進歩してないじゃん? この事態を打破する為に、地図を確認、苦手なUターンをして来た道を戻るのであった。そしたらすぐに、北川温泉黒根岩風呂の巨大な看板があるではないか。こんなでかい看板を見落とすとは、オレの目は節穴だ。これがいわゆる、姑獲鳥の夏エフェクトですか、中禅寺先生。

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この黒根岩風呂は有名な温泉なんで、ぜひ入りたいと思っていたところだ。ゴールデンウィークなんで、開店時間が早くなってるから入れるぞ。駐車場が砂利の未整地なんでビビりながら止めた。温泉受付、なんか個人経営の駐車場の切符売りのおっさんみたいな箱形の受付で600円を払って、岩の階段を下りると、そこに掘建小屋みたいな脱衣所があり、そこに荷物をまとめて風呂に入るのだが、すでにほぼ満員。それでもかき分けて入ると、波の音に空の青と海の青と絶好のロケーション、こりゃいいわい、最高だわい、などと満喫していたのはよかったが、がやがやと5、6人のグループがやってきて、脱衣所は一気に山手線か京浜線の通勤ラッシュ、出ようとした連中とかち合っておしくらまんじゅうの様相を示すのであった。これはやばい、出るチャンスを逃すとエラいことになるぞ。となりに入っている2人組も、どうやら出るタイミングを見計らっているようだ。鋭い目つきで脱衣所をうかがっている。こっちも臨戦態勢、5人組が湯に入ったら出ようと思ったら2人組に先を越され、そこへまたしても今度は4人組の来襲だ。何か全然落ち着かんな。そしたら5人組が記念撮影を始めるしもうメチャクチャだよ。4人組が何とか湯に入って、2人組が出たところでこっちも一気呵成に脱出を敢行した。ふう、やばかったぜ。何か椅子取りゲームしてるみたいだな。北川温泉の旅館の客がここに無料で入れるもんで千客万来なワケだそうで、うわさ以上に、ロケーションはいいが混雑がひどい温泉だった。まあ、これも旅の醍醐味だわさ。

駐車場に戻ったら、ベンツのオートマチックオープンカーが丁度ルーフをオートマチックオープンにするところだった。自動的にルーフが開放されてトランクに格納されるのだ。すげーかっこええ! この車を設計した人は絶対にサンダーバード世代だな。ロト6が当ったらベンツ買うぞと心に決めて、バイクを引っ張り出して温泉を後にした。

海岸沿いの温泉にも入ったし、いよいよ、伊豆温泉の聖地、伊東に向かうのだ。そこの共同浴場で今日の温泉の締めとしよう。カンペキな作戦だと思ったら、伊豆高原手前で急激に流れが悪くなり、あっという間に渋滞に突入していた。恐るべし伊豆高原、さすがは伊豆半島の一大観光地だな。ハンパじゃない車の数だ。反対車線もこっちの車線もほとんど路上駐車場状態。仕方がないので掟破りのすり抜けだが、路肩が狭いので神経すり減らして走って走って、どんだけ走っても渋滞は終わりが見えない。ようやく伊東市街に入ったときは、もう精根使い果たして、温泉はいいから宿に行こうと言うことになった。

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伊東駅まで行き、そこから宿を探して2年前と同じようなところを迷走、やっぱり進歩してないじゃん。地図を見てようやく今日の宿、すずの木苑に到着しだ。ばーさんがお出迎えしてくれた。「1台だけかね、もう1台は?」「いえ、1台だけですけど」「2台じゃなかったのかなあ」「いえ、1台です、別の客じゃないですか」「ああ、そうかね、ガレージに入れるかね」ガレージを見せてもらうと、今は物置になっており、車は入らないのでバイク置場になっているそうで、車が入って来ないなら止めようと言うことでそこへバイクを置いた。それから荷物を持って宿に入って、ばーさんの案内で部屋に入ると、ツインの洋室でなかなか広いしいい部屋だった。

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伊東駅前の商店街に繰り出す予定だったが、お風呂入れますよとばーさんに言われて入ることにする。小さな風呂温泉なんで、あまり期待していなかったが、一番湯だったみたいで、すこぶる気持ちがいいではないか。これが伊豆半島温泉クオリティってヤツだよ。クリアな湯だよ。熱いし。体を慣らしてゆっくり入る。渋滞路のすり抜けで神経もすり抜けきった身も心もボロボロだったのが見る見るうちに回復するのがわかる。ひょっとしたら、今日一番いい温泉なんじゃないのかとさえ思うのであった。温泉を出たら駅前に行こうかと思ったのだが、もうすぐ晩飯になると予想して、食ってから繰り出すことにした。それまで荷物を整理したり、ツーレポをつけたりしていた。が、いつになっても食事の案内がない。結局、7時頃にようやく館内放送で食堂にどうぞと案内が流れた。

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食堂に行くと、料理が自慢の民宿だけあって、海の幸満載だった。腹も減ってたし、我を忘れてガツガツ食いまくってしまった。こんなガツガツ食いをしてはいかんのだと、理性が制動をかけても、もはや胃袋は脳みその指示を無視して暴走するのであった。気がついたらご飯3杯おかわりの全品目平らげていた。うー、満足なのじゃ。ごちそうさまでした、部屋に戻ると、ようやく胃袋が事態を理解したようで。パトランプ点滅、食い過ぎ警報発令。ソファに座って、胃袋が必死に消化活動を繰り広げるのを待つしかないのであった。うーんうーん、食い過ぎた。食い過ぎた。これって随分昔に鹿児島のホテルでも経験したよな。あのときも商店街に繰り出せなくて大失敗だったよな。やっぱり全然進歩していないじゃん。

結局、駅前に繰り出すことも出来ず、うなって夜は更けていくのであった。でもうまかったから幸せ

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