登場人物

リトル …… コードネーム リトルパール FTR223

オプ …… コードネーム オプチマス スペイシー100

団長 …… コードネーム ブラックパール CB1300SF

ハリー …… コードネーム ハーキュリーズ CBR600RR

アイツ …… サイト管理人

「おい、オプ、オプ」

「何スか、リトル先輩」

「オレはもうこれ以上我慢できん、もう堪忍袋の緒が切れたぞ」

「何があったんスか、先輩。ああ、本社に行ってきたんスね」

「そうだよ、本社に行ってきたんだよ、何年振りかに洗車してもらったんだよ」

「良かったじゃないスか」

「よくねーよ、オレの洗車時間、何分だと思う」

「何分なんスか」

「15分だぞ、団長は2時間以上かかって洗車してもらってるのに、この差は何なんだよ、同じ04年式なのに、何でこんなに差を付けられるんだ」

「だって仕方ないじゃないスか、先輩ちっせーし、細いし」

「そんなのカンケーねえだろ、細かいところまで磨けば時間がかかるはずだ。手抜きしやがってるんだ」

「そうっスかねえ」

「大体、団長はもうオイル交換してもらってたぞ。オレなんか、この前2年ぶりにしてもらったのに、団長は半年で交換かよ。」

「走る距離が違うっスからね」

「カンケーねえだろう、こっちは古いオイルで腹の調子が悪くてしかたなかったんだクソ」

「それに団長はロングに行くから体調整えておかないと」

「そうそれだよ、ロングに行くからって、団長はここ3連ちゃんでツーリングだ。当初は、交互に走るはずだったのに、全然順番が守られてない」

「まあまあ、来週は出動予定なんだから良いじゃないスか」

「おまえもちったあ怒ったらどうだ。納車当時はちやほやされて、専用ブログまで立ち上げて、なのに今は全然乗ってもらってないんだろ」

「暑いし、いいじゃないっスか、ここで寝てた方が」

「ここも気に入らねえ。本社は専用のガレージなのに、ここはケッタと同居だし、それに雨漏りするし、洗濯物も干しやがるからな」

「じゃあどうするんスか」

「そこでだ、オレには考えがある」

「何するんスか、まさか本社を爆破するとか、ヤバいっスよ、テロは、世論の支持が得られないっスよ」

「爆破だと? そんなちょろいもんじゃねえ、もっとキョーレツなことだ、これを見ろ」

「何スかこのペンキ」

「痛車って知ってるか」

「ああ、あのアニメのキャラクターをボディにペイントするヤツっスね、それがどうしたんスか、あ、まさか」

「そのまさかよ、団長とハリーには、痛車になってもらうのさ」

「ハリーさんまでっスか」

「ハリーの野郎は新入りのくせに態度がでかいんだよ、専用のスタンドまで買ってもらいやがってよお」

「えー、痛車っスか、でも何を描くんすか」

「そうだな、今流行ってる『けいおん!』とかどうだ」

「『けいおん!』っスか、じゃっかんブーム去ってる感じっスよ」

「じゃあ『花咲くいろは』はどうだ?」

「新劇場版公開間近の『エヴァンゲリオン』のほうがいいっスよ」

「『ひぐらしの哭く頃に』」

「『サクラ大戦』」

「古いっスよ、そうだ、『涼宮ハルヒの憂鬱』を忘れてたっス」

「そうか、忘れてた。人気だし旬だし、それにしよう」

「団長もハリーさんも『涼宮ハルヒの憂鬱』っスか笑える」

「その通りだぜ、乗ろうと思ってカバーを剥がせば痛車だからな、こんなの乗ってられっか、しかしバイクには乗りてぇ、しゃあない、リトルパールに乗るか、という事になる」

「でも先輩、アイツ、ヘンタイだから逆に喜んじゃったりして」

「喜ぶか」

「チョークールじゃん、サイコーとか言って自慢してツーリングに行ったらどうすんスか、ツイッター仲間にアニメオタクもいるし、写真撮って見せたりしてもりあがりまくりっスよ」

「それヤバいな、ありえる」

「でしょ、どうするんっスか」

「そうだ、アイツは白薔薇派だから、紅薔薇か黄薔薇を描いてやろう」

「『マリア様がみてる』っスか」

「ここにチョーお嬢の祥子様か人生は青信号の由乃を描いてやる」

「するとどうなるんッスか」

「なんで紅薔薇なんだよー白薔薇派のオレがこんなのに乗れるか、志摩子さんじゃなきゃやだー、仕方ない、と言ってリトルパールに乗る事になる」

「なるほど、先輩あたま良いっスね」

「だろ、作戦勝ちだぜ」

「でも先輩、アニメキャラなんて描けるんすか」

「あ」

「ムズいっスよ、あれ」

「そうだな、それは考えなかった」

「へたくそな祥子様じゃ説得力ないっスよ」

「じゃあどうしろって言うんだ、おまえもちったあ知恵を出せよ」

「先輩、こういうときは世論を味方にするんっスよ」

「世論か」

「そうっス、アイツはサイトの反響をチョー気にしてますから、例えば掲示板に、最近リトルパールの出番が少ないですね、なんて書き込めばいいんっスよ、そしたらヤバい乗らなきゃ、って乗るっスよ」

「なるほどそれはいい作戦だ」

「でしょ」

「だけどどうやって掲示板に書き込むんだ」

「簡単っスよ、そんなの成り済ましすればいいんスよ」

「成り済ましって何だ」

「テキトーにハンドルネームつけて書き込むんっスよ」

「何かよくわからんがやってみよう」

「じゃあ今のうちにiMacを起動させてサイトにアクセスするっス」

「おまえ詳しいな」

「Safariを起動させるっス」

「何だサハリって」

「ブラウザっすよ、ネットサーフィンするのに使うんっスよ」

「おまえ詳しいな」

「ほら、これでアイツのサイトが表示されたっス、掲示板に書き込むっスよ」

「これが掲示板か」

「先輩書き込むっスよ」

「あ」

「どうしたんっスか」

「何か触ったら違うページになった」

「バナー広告をクリックしたみたっスね」

「なんだこれ、goobikeだと」

「ブックマークをクリックしたみたいっスね」

「あ、ちょっと待て、ちょっと見ようこれ」

「先輩も好きっスね」

「ちょっとだけだ、ちょっとだけ」

「先輩、こういうのが好みっスよね」

「おお、いいねーこのXR、きれいな脚してるぜたまらんな」

「こういうのはどうっスか」

「ドカはちょっとなー、外人は苦手なんだよなーでもいい女だよなドカ」

「勝ち気そうなところがいいっスよね」

「そうだな」

「先輩そろそろ掲示板に戻りましょう」

「そうだな、もうちょっと見たいけど戻ろう」

「じゃあ、ここに書き込んで下さい」

「よし、このキーボードを打てばいいんだな、あ」

「どうしたんスか」

「キーが押せない。オレのハンドル大きすぎるもんで、他のキーも打ち込んじまう」

「アンドレザジャイアントみたいっスね」

「感心してる場合か」

「困ったスね」

「くそ、苦労してようやくここまで来たのに」

「いえ、先輩、オレらまだなんにもしてないっスよ」

「どうにかしろ」

「どうにかしろと言われても」

「このままでは終われねえぜ」

「あ、ヤバいっス、アイツ起きてきたっス」

「クッソー、今日のところはここまでだ」

「逃げるっス」

「逃げよう」

「気づいてないみたいっスよ」

「そうだな、何やってるんだ」

「ネットサーフィンしてるっス」

「どうせスケベなサイトでも見てるんだろ、XXX.comとか」

「先輩なんでそんな事知ってるんっスか」

「え、いや、それはその」

「アイツ、楽天を見てるっスよ」

「何探してんだ」

「FTRリアキャリアで検索してるっス」

「リアキャリア」

「先輩につける気っスよ」

「マジか、そうか、オレの為に」

「アイツ、意外にいいヤツっスよ、先輩も許してやったら」

「そ、そうだな」

「決まったみたいっス」

「ラフ&ロードのリアキャリアか、なかなか良いじゃん、ごっつくて機能的で。あれがオレに付くのか、かっちょえー」

「先輩かっちょえーっす。街のXRちゃんが振り返りますよ」

「そうか、オレってかっちょえーよな、イケてるよな」

「あ、高いからやめたみたい」

「なんだとコラ、くっそー、やっぱり痛車にしてやる」

「先輩、だからそれは無理だって」

続きません

 

<2011年7月10日FTR223「洗車メンテナンス」より転載>