トンネルを抜けたら融雪の平湯

11月16日(土)

まっちゃんのパソコンが壊れた。聞くところによると、なんかヘンな表示になって真っ暗になったまま、ウンともスンとも言わなくなったと言う。あ、そういえば、こんななぞなぞがあったよな、電話に出た人がウンともスンとも言いませんなぜでしょう? 答え、モシモシと言いました。それを思い出して、じゃあ、モシモシと言ったのか? と質問したら、ううん、モシモシも言わない、サヨウナラも言わなかったよヒドいよね、と答えが返ってきた。そうか、それでは仕方ないな、確かにこのところ、まっちゃんのパソコンは挙動不審だったので、いつ壊れてもおかしくなかったもんな。買い替えるか。この物入りな時期に、家計が火の車の時期に、その上、さらに増税増税値上げラッシュの年末年始が行く手を阻むというのに、何がナンタラミクスだボケ、何が景気は上向きだクソ、この冬のボーナスがバブル期なみに高水準だとコラ、すべては持っている側、勝ち組の話なのであった。愚痴をこぼしていても仕方がない、安いパソコンを探そう。ちょうど家電量販店のチラシが入ってたので早速チェックしてみた。パソコンの欄を見ると載ってたぞ。49800円ってのがあった。これでいいじゃん。どこのメーカーだ? Lenovoだった。Lenovoと言えば、元々はコンピューター業界の巨人IBMから切り捨てられた、あの栄光のノートパソコン名ブランドThinkPad、いまやかの大陸の国のプランドになっちゃって、なにやら怪しげなウワサがあるパソコンじゃん。ハードディスクにナニが入ってるらしいじゃん。こんなのダメだ。却下。別のはないか。同じ価格で別のパソコンがあった。Gatewayだった。Gatewayと言えば、元々は直販メーカー最大手優良企業だったのに、日本法人がアフターに手抜きして総スカン食らって日本撤退した上に、牧場経営してたオーナーが売却しちゃってからろくなもんじゃないらしいじゃん。こんなのダメだ。却下。もうちょっと高いのでもいいからないかと思ったらあった。DELLだ。DELLと言えば、低価格直販メーカーとしてパソコン業界を牛耳る最後の大物じゃないか。でも最近、業績が急速かつ深刻な悪化傾向にあるもんで、大幅リストラと代表のマイケル・デル氏に権力を集中させて思い切った改革を行うことでこの危機を乗り越えるそうだけど先行き不透明らしいじゃん。こんなのダメだ。却下。何だよ、安いパソコンにろくなもんがないなあ、日本製のはないのか、東芝とかNECとかさ。そしたらまっちゃんが、ハッと気がついてパソコンの電源ボタンをポチッと押した。そしたら普通に起動してきた。しばらく待ったら、普通に使えるようになった。まっちゃん、ひとり頷いた。そうそう、わかった。電源ボタン押すのを忘れてたんだ、あはは。もうダイジョーブみたいだよ、よかったね。そうかそれは良かったね。でもなんかちょっと納得いかないような気もするので、どうしてくれよう。そうだツーリングに行こう。

ということで週末、ツーリングに行く事にした。しかし、急激に冷え込んで一気に12月の寒さになったもんで、ちょっとバイクに乗るのもおっくうな時期になってしまいました。困ったものです。こういう時期は、悩んではいかんのである。間違ってもこたつで二度寝などしようものなら、しまったー寝過ごしてしもうた、とにかく行ってくるわ的な状況になるので、用意周到に当日を迎えて一気に出撃しなければならない。そのために、前日には計画を練りに練り込んだのであった。まず、行き先である。12月号の温泉博士に載ってる温泉で行けそうなのは、岐阜で焼乃湯、槍見の湯、すくなの湯、長野は飯田天空の湯、柿其温泉あたりか。愛知と三重にもあるけど、やはり今、山の方に行けるうちに行きたいので岐阜長野を狙おう。行きたいのはやはり行った事のない焼乃湯と槍見の湯である。この2湯はそばなんで、一気にダブル入浴したらいいぞ。よしここに決定、と思ったんだが、しかし、この時期、新穂高まで行けるのか? まさか雪は降ってないと思うけど、時間の問題もある。往復400キロ、片道5時間弱必要だから朝6時に出て11時に着いて、温泉2つ入って1時に向こうを出ても帰ってくるのが5時過ぎになっちゃうもんな。暗くなる上寒くなるけど大丈夫かなあ。万が一行けなかったらすくなの湯に入ればいいか。そうだそうしよう。柿其温泉もいいけど、こういう小さい温泉は、今日はやってませんとか言われそうだもん。飯田の天空の湯は、一度行った事あるけど、過去のレポを見るとなんかイマイチだったみたいなんで行く気が無くなった。ということで決定。準備をしたらさっさと寝て、翌日、5時に起きたら気象庁のサイトをチェックし、天気バッチリ、予想最高気温は15度なんで通常型冬装備で行く事にして、まだモモヒキは出番無しだ。まっちゃんの指示によりハムマヨネーズトーストを作って食ったら着替えて出発である。

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実家ガレージから旗艦CB1300SFを引っ張りだしてエンジン一発始動、気温が低いのでエグゾーストからぽっぽっぽっぽと吹き出す排気ガスが白くもわーっと上がってくるのもこの時期ならではだな。ハッキリ言ってちょっと寒いんである。こたつが恋しかったりするのである。しかし、ライダーは暑かろうが寒かろうが走る、それがライダーなのである。それがいやならいつでもライダーなんかやめたるわい! くーっ、キマったねー、やっぱガクラン八年組は偉大だぜ。これに比べたら魁!男塾なんざママゴトよ。よし、決まったところで暖気を終わらせて出発しよう。よし、まずはガソリンである。いつもの19号線沿いのコスモ石油に行くと、給油機の前にバイクを止める。ここは朝からメール会員割引ができるのさ。コスモ石油のメール会員は3カ所入ってるるけど、朝からなのはここだけだ。颯爽とケータイを出してメールを見る。そしたら新着メールが13件も来てた。全部DMだし。コスモ石油がそのうち5件だし。さっき言ったろ、メール会員は3カ所入ってる、なんで5件も来てるのさ。どこかがダブって出してるとしか思えん。どらがどらだかわからんので、全部チェックしないかん。スッゲー時間食う。メンドー。そして13件の新着の内、コスモ石油の5件を全文見たんだけど、メール会員割引のパスワードは掲載されていなかった。なんで? おかしい。もう一度着信メールを確認したら、新着ではなく、既に着信していたメールにもコスモ石油のがあって、それを見たら、そこに載ってた。やれやれ、やっとパスワードがわかったよ。エラい時間かかったわ。ようやく給油できた。13リットル入った。260キロ走って13リットル、リッター20キロ。ちなみにレギュラーの価格はリッター146円。まあ、安くなった方じゃないの。

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満タンになったのでコスモ石油を出て19号線を多治見に向かう。天気は晴れて快晴に近い素晴らしい天気だ。まさにツーリングに行きなさいと言わんばかりの天気である。ちょっと寒いけどな。指先冷えるけどな。ああ、この指先が冷える感覚がたまらんな。冬のツーリングって感じじゃん。寒いんであんまりスピードが乗らないんでそれ相応のスイードで走ってたら、黒い新型クラウンが煽ってくるので先に行かせたら、そのクラウンはさらに後ろのクルマに煽られていたのであった。そのクルマとはHONDAのS2000なんだけど、クラウンをグワっとすれすれで走行車線から追い越して、ふたたびクラウンの鼻先に割り込むように追越し車線へ進路変更してった。独断と偏見だけで申し上げると、このHONDAのS2000に乗っている方の行儀の悪い人率ってのかなり高い気がします。ワイルドスピードの印象が悪かったからかも知れんけど。

多治見市内に入って、いつもの小泉ルートで可児市街地を抜けていく。電光掲示板に「濃霧注意」ってあったけど、そんな感じまるでない青空。交差点で信号待ちするのになるべく日向で止まろうと苦労してたら、歩道にカップルがいて、妙な間合いでお互いの方を見て何か言いあってる。遠いしヘルメットしてるので全然会話が聞こえんけど、あの妙な間合いからあまり楽しい話では無いようだ。「なんで、なんで終わりなんだよ」「ごめん、もうきめたんだ」「そんなの認められるかよ」「だって、いつだって順一はそうじゃん、私の事なんか全然わかってない」「なにがだよ、そんなのわからねーよ」などという感じの別れ話でもしてるのかも知れん。朝から大変だな。お疲れさまです。あとさ、どうでもいいけど、この旧248号線沿いの可児高校、いつもいつも通るだびにナンタラ部優勝だのナンタラ部出場決定だの膨大な量の横断幕だか垂れ幕だかあるんだけどさ、今日は特にスゴかったよ。ほとんど全日本ラリー選手権のスポンサーステッカー貼りまくりの競技車輛状態だった。

そして川辺で国道41号線に合流する。このところ国道19号線ばっかり走ってたけど、やっぱり41号線こそ我がホームコースなんで落ち着くねえ。いいねえ、41号線サイコーですよ。しかし寒いな。道路脇の電光掲示板温度表示は5度6度だ。天気はいいんだけど。そして、まだまだ「濃霧注意」が電光掲示板に表示されてるけど、全然青空だよ。カンケーないよ。よっしゃー、カッ飛びだぜえーと思ったんだけど、なんか前の方がダンプで、しかも砕石満載のダンプが、まるで背中で汗をかきつつ漢を語る親父みたいなダンプがぎゅおんぎゅおんエンジンの音をけたたましく立てながら走ってるので、あんまりというか全然カッ飛べないじゃん。てめーおっせーんだよ、くそ親父! と思ったんだけど、なんか反抗期の中学生になったような気がしたのでやめた。で、おとなしく後ろについて走っていった。そしたらこの寒さでトイレに行きたくなったので、道の駅七宗に緊急ピットインした。トイレを済ませて、ちょっと日向ぼっこして体温を回復したら再び出発する。

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親父ダンプがいなくなったので、今度こそカッ飛びだぜ、と思ったら、今度は観光バスがういんういんういんと苦しそうなエンジン音で走っていくのに後ろについてしまった。っていうかさ、なんか全般的に交通量が多くて41号線の流れが悪いんだよ。こんなペースで走ってたら、いつになったら新穂高に着くんじゃ。困ったな。あーそれとも、やっぱり寒いから、新穂高なんか無理かな。もうちょっと近場でゆっくり走った方がいいのかな。腹も減ってきたし、いつもの喫茶店でモーニングしてひめしゃがの湯でもいいか。今朝は時間がなくて実家コーヒーも飲めんかったもんな。だいたい、こんな寒いのに遠乗りなんて無理だよ。焦って走ってもいい事無いよ。やっぱり大人の走りをしないと、目を三角にしてカッ飛ばすなんて、バイクバブル時代でもないしさ、そういう事で、喫茶店に入ってぬくぬくしようぜ。そうしようそうしよう。アレなんか変だな。あ、そうかわかったぞ、キサマの正体が! チキンハート! がーっははははははっよくぞ見破ったな! その通り、オレ様はチキンハート様よ! くっそーチキンハートのくせになんて態度がでかいんだ。がーっはははははっ、いいではないか、のんびり走りたいのであろう、カッ飛ばして目的地と往復してるだけのツーリングのどこが楽しいのだ? のんびり走ればいろいろ見えるぞよ。うーん、それもそうだなあ‥‥って、いや違うぞ! その手に乗るか、初心貫徹だ。あくまで目的地は新穂高だ、行くぜ。

こうしてチキンハートを撃破した我々は41号線を突き進む。すると、前方の山の上に雲がかかり始めた。そして山の向こう側は白くもやがかかっている。あれ、おかしいな、さっきまで晴れてたのに、なんでだ。そして思い出したのだった。そういえば「濃霧注意」って何度も電光掲示板に表示されてたな。あれがこれか。マジで濃霧なのであった。幸い高度があるので、目の前がまっしろになって視界不良になる事もないから、走りに支障はないが、陽がささなくなっちゃったので寒いであった。そしてそのまま霧が晴れる事なく、飛騨金山までやってきた。ここで新しいデイリーヤマザキにピットインする。トイレを済ませて、何かあったかい物を飲もうと思い、ホットコーナーの棚に向かった。コーヒーとお茶はトイレが近くなりそうなんでやめて、ハチミツレモンみたいなのがないかなあと思ったら、ホットレモンがあったのでそれにしようと思ったら、その横に、ホットカルピスがあったので「あ、こんなところにホットカルピスがあるがや、これおいしいんだよねー、こっちにしたほうがいいかなあ、でも濃いかなあ薄いとやだけど濃いのもやだなあ」と独り言をブツブツ言ってたら、誰もいないと思ってたのに、すぐ隣に現場作業のにーちゃんがいた。ヤバい、一人でブツブツ言ってるのを聞かれたか、ヘンなやつと思われたか、あぶないヤツと思われたか、しかし、にーちゃんは何事もなかったように缶コーヒーを持ってレジに行ったのでホッとした。で、ホットレモンを買って、バイクにところで飲んだ。飲み終わったら出発する。

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そこからしばらく走ると、霧が晴れてきて再び青空が見えてきた。下呂付近まで来ると、山々も紅く染まってきて、燃える紅葉になってきてた。道路脇の紅葉も見事に紅くなってきて、そこら中にカメラマンが三脚を立ててた。特に、いつも鉄道ファンがカメラを構えているダム湖の鉄橋付近には、これでもかというくらいのカメラマンが並んで大砲みたいなレンズに三脚を立ててた。そりゃそうだわな、鉄道に鉄橋が湖に写るだけでも絵になるのに、その上、見事な紅葉と来れば鬼に金棒とチョコレートくらいの破壊力だよ。帰り道に空いてたらちょっとコンデジしかないけど写真を撮ろう。そう思いながら下呂に突入、下呂ではいつものように空中給油を行い、航続距離の調整をした。よし、これは絶対に新穂高まで行くとおう決意の表れだ。行くぜ、必ず行くぜ。

決意も新たに鼻息も荒く、下呂から高山に向けて突き進む。チキンハートに誘惑されたひめしゃがの湯と行きつけの喫茶マルティンを通過すると、目前に巨大なトンネルが出現した。おお、これは、近来着々と工事が進行していたあの新しいトンネルではないか。ついに完成したのか! おお! 歓声を上げながら走っていく。どこかで写真を撮りたいと思ったけど、止めるところがないと言うか、まだ一部工事中なんで工事の人もいたのでヘンなところで止めたら怒られるかもしれん、ビビって止めれんかった。ちょっと残念だがしゃあない。トンネルを抜けたら道の駅渚だ。おしっこがちびりそうなんで急いで入って駐車場にバイクを止めると、トイレに駆け込んでホーッとした。いかんなあ、寒いとトイレ近いなあ。ジジイだなあ。ちなみに、ここの温度表示は8度であった。

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道の駅を出たら、高山は目前だ。その前、久々野で枝道に入り、宮峠避けの美女街道ルートを進む。ちょっと前に見かけた道路情報に「宮峠凍結してるかも」「数河峠は凍結してるよ」と表示されてて、こりゃ宮峠ヤバいと思ったんだけど、考えたら、宮峠がヤバいなら、この辺りの峠全部ヤバいって事じゃん。この美女街道もヤバいかな、っていうか、平湯峠もヤバいかも知れんなあ、などと考えながら美女街道に進むと、いつもの展望台から、今日は特にきれいにアルプスが見えるではないか。これはバイクを止めて写真を撮ろう。ちょっと寄り道だ。今日はよほどきれいに見えるようで、地元の人のクルマも止まってた。写真撮ってるのかな。雪の冠ったアルプスを写して出発する。

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そこから交通量が激減、他にクルマもバイクもいないので、ちょっとカッ飛ばしていったったよ。カッ飛ばして国道158号線までやってきたら、今日、おそらく初めバイクとすれ違った。さすがに天気がいいけど寒いので、この辺りを走ってるバイクは少ないなあーと思ったら、その直後に2台のバイク、おそらく連れ合いだと思うけど、すれ違って、ピースサイン出してきたので、こっちもピースサインを返した。この寒い中走ってると、思わずピースサインを出したくなるよね。しかし、向こうから来たということは、長野県側から来たということだがら、少なくとも平湯峠を越える事は出来そうだな。よし、そうとわかればとりあえず、ここで何か食っておく方がいいな。この先、食いもんを食うところがないから、あるとしたらターミナルの食堂しかないけど、あそこでこれまで食ってた立ち食い風のそばがメニューから消えちゃったんで、食うもんがないから、峠まで最後のデイリーヤマザキでパン食っておこう。いつもは帰りに寄るんだけど、今日は行きに寄って食おう。バイクを止めて、メーテルの声の人がCMしてる、ホストクラブの売れないホストみたいな名前のお茶と、この前、食おうと思ってたのにまっちゃんに食われちゃったずっしり小倉デニッシュを買って食った。食ったら落ち着いたので出発した。

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そこからは、やはり観光地らしく交通量が多くてそこそこのスピードで走っていく。そして、いよいよ、乗鞍スカイライン入口前、平湯トンネル前まで来たら、あちこち霜が降りてるし、雪が降った形跡があるので、こりゃ、ひょっとしてひょっとするとひょっとするぞ、と思いながら、ビビりながら、トンネルに向かって行った。トンネルの中はいつもなら極寒なんだけど、今日はそこそこ暖かかった。これがトンネルの不思議なところだな、夏涼しく(寒い事もある)冬暖かい(寒い事もある)それがトンネル。そんなトンネルを抜けたら、そう、あの日本人で只一人のノーベル賞作家、若い頃の加賀まりこに求愛して断られたノーベル賞作家が1935年に発表したあまりにも有名な、その書き出しがあまりにも有名なあの作品のような状況だった。要するにこれだ「トンネルを抜けると雪国だった」そう、雪だった。路面は除雪してあったが、道路脇は雪の積み上げられた山、そこから融雪の流れる路面がビショビショで、バイクはその跳ね返りで泥水ビショビショ、ぎえー、やってしもうたあー、ああーやってしもうたあー、くっそー、やっぱりチキンハート様の言う通りにしておけば良かったかも知れん、などと思っても後の祭りなのであった。

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ゆっくりと峠から、平湯ターミナルまで降りていくと、見渡す限り残雪がうっすら広がる駐車場にバイクを止めた。もちろん、バイクは他に1台もいなかった。おるわけないわな。バイクを見たら、ぎゃーっと叫びたくなるくらい汚れてた。もうガックリである。あーあ、ここがこれじゃ、新穂高なんか絶対無理と判断。断腸の思いで引き返す事にした。当初の作戦Bとしての、すくなの湯に行こう。シャーベット状の雪で転倒しないように慎重に進んで駐車場から離脱すると、これまたゆっくりと峠を登ってトンネルをくぐって、すくなの湯まで戻った。

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すくなの湯は毎回開店時間に悩まされるのであるが、10時30分だったり11時だったり11時30分だったり、実にいい加減だったんだが、今回はすでに11時30分も過ぎているので、どう転んでも開店時間前ということはないから、あとは本日臨時休業でもない限りは入れるぜ。駐車場にバイクを止めて建物の方に歩いて行く。中に入ったら、フロントには秋元康みたいなおっさんがヒマそうに座ってた。温泉博士を出してハンコをもらって、ここの温泉は2階と3階にあるので、どっちが男なのか階を確認して2階が男湯と表示が下げてあったのでエレベーターで2階に上がった。

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エレベーターを出て、さあ温泉に入れると思って暖簾を見たら赤かった。赤だと? なんで赤? 普通、男湯に赤はないわな? でもここ2階だよね。さっき、男湯が2階で、女湯が3階とあったよね? おかしいな、どこにも男湯女湯の表示がないので、色だけで判断しないといかんのか。考えて、3階に行ってみる事にした。で、3階に行ったら、暖簾が青かった。どう見てもこっちが男湯だ。暖簾をくぐったら、男と表示してあった。よし、正解、男湯だ。ということは、フロントの表示が違うんじゃん。あのまま、あの表示を信じて、赤い暖簾をくぐって中に入っちゃってたら、エラい事になってるぞ。脱衣所に中に入って肌も露な女性たちがいたら、キャー痴漢よー覗きよヘンタイよーと叫ばれて、大騒ぎになっちゃうところだった。大騒ぎだけならまだしも、ケーサツとか呼ばれちゃって「いや違いますぼくは間違えただけです」「うそよーこのヘンタイはじめから狙ってきたのよー」「まあまあ、詳しい事は署で聞こうか」「おまわりさん信じてくださいぼくは無実だ」きっとあのコンビニでブツブツ言ってた事も証言されるんだ「なんか一人でブツブツ言っててアブナソウな人でした」そして取調室で厳しい取り調べがされるんだよ。「お前がやったんだろう、正直に言ってみろ」「お父さんは泣いてるぞ」「カツ丼食うか」とかなんとか言われて、48時間厳しく取り調べをされて意識がもうろうとして「ぼくがやりました」って答えちゃうんだよ。こうして冤罪がまたひとつ増えるんだ。人生棒に振るヤツが一人二人増えたってあいつらにはカンケーないんだよ。あいつらは単に検挙率さえ上がりゃいいんだよ。テレビが視聴率を上げりゃいいのとおなじで、デパートが差益率を上げりゃいいのとおなじで、何でも世の中そんなもんだよ。犠牲になるのはみんな力のないヤツらなんだよ。あぶないところだったぜ、あやうくその犠牲の一人になるところだった。まったく、世の中、どこに転落する落とし穴があるかわかったもんじゃないな。「星籠の海」みたいだ。

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ということでようやくたどり着いた温泉にゆっくり浸かってぬくぬくしたら出た。温泉を出たら、後は一目散に帰ってきた。帰りに道の駅白川で鶏ちゃんを買った。その道の駅で、隣にピッカピカの赤いCBR900RRが止まってて、泥水跳ねで汚れたCB1300SFがとても悔しそうだったので、悔しかったです。かえって洗車する時間がないので、来週にでも洗車しようと思う。

本日の出費 

ホットレモン 130円
ホストクラブのお茶 120円
ずっしり 116円
鶏ちゃん 360×2個

本日のCB1300SFの走行距離 360キロくらい
累計のCB1300SFの走行距離 69700キロくらい


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