1章 未踏の高速
8月12日(火)
朝の3時半ごろに雨の音で目が覚めた。がーん。降ってきやがった。降ってきやがったよ。天気予報は確かに良くなかったけど、まさかこんな時間から降り始めるとは思わんかったな。最悪の事態。やはり晴れていた昨日のうちに出発すべきだったなんて今更思っても何にも役立たずなのである。しかし、台風で散々降ったんだから、もう晴れてもいいじゃん。どうしてこの出発のタイミングで降るのだろうか。やはり、日頃の心がけの問題なんだろうな。うだうだ言っても仕方がないので、カッパを着用で出発するしかない。まっちゃんは「雨じゃん、もうやめたら? 今年はダメなんだわ」と至極まっとうなコメントをしたらまた寝てしまった。日の出前の暗い雨の空を見上げながら考えた。そうだなあ、もうやめようかなあ、だいたい、台風で延期ってのはもうケチがついてるからな。しかし、一方で「あきらめらたらそこで試合終了ですよ」とこれもまた耳に痛いセリフも浮かぶのであった。そうだ。あきらめてはいかんのだ。「まっちゃん、僕は行く。僕は行くよ」そう宣言すると、まっちゃん「あ、そう。勝手にすればー」ということで、朝ごはんを食って、メッシュレザーに着替えたら、実家ガレージへ、土砂降りの中傘をさして歩いて行く。ガレージで待機する新型CB1300SFは、すでに荷物も積載完了で、準備万端なのであったが、改めてレインカバーをかぶせて、モンベルのカッパを出すと、何で初日から着ることになるのか、おかしいな、こんなはずはない。昨年のリベンジに晴天ツーリングになるはずだったのに、クソクソクソオとブツブツ言いながら着た。そして、土砂降りの中、新型CB1300SFライアンストーンを引っ張り出すと、エンジン始動、大粒の雨に打たれながらも、何するものぞとHONDAのマシーンは雄叫びをあげたのだった。これでチキン野郎な気持ちは吹っ飛んだ。よし、こうなったら行くぜ。今年は実に四苦八苦したが、もうここまでだ。今は雨だが、必ず晴れになる。止まない晴れはない。あれ? おかしいな、違う、止まない雨はない。まっちゃんに「ちょっと行ってくる」と言って、発進した。
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まずはガソリンである。前回のツーリングが中途半端だったんで、あまり入らないと思うのだが、やはり高速道路に入る前には満タンにしておきたい。いつものコスモ石油に行くと、そこでガソリンを入れた。口元いっぱいいっぱい入れた。これだけしっかり入れたら大丈夫だろう。雨の給油は実にやりにくいので、先に済ませた方がが賢明だな。163円で6リットル入った。給油が完了したので出発する。
ザーザー降りの雨の中、19号線を走って行く。まだ暗い中の出発はいかにもロングツーリングの幕開けなんだが、この雨ではぶち壊しだな。春日井インターチェンジに入る。新型にもかかわらず、ETCが装備されていないので、今回も一般の料金所から通行券を引き抜いて、レインカバーをめくりあげてタンクバックにしまった。料金所機械化はどんどん進んで味気ないのう。昔は料金所の人との一言ふたことのやり取りが良かったなあ。
速度をあげて高速道路に合流する。向かうは小牧方面。これを間違えて名古屋方面に行っちゃったらえらいことになるのだが、幸いそんなドジをしたことはないのだ。高速道路に入ったら、雨の中の走行のため、速度は抑えて走る。山口まで約700キロ、長旅だ。お盆休み期間とはいえ、一応平日だからなのか、トラックが圧倒的に多いな。たまに帰省らしい他県ナンバーのクルマが走ってるのを見るけど、少ない。バイクは見かけない。電光掲示板の道路情報表示には、特に渋滞情報もなかった。順調に走って行く。岐阜にはいる木曽川辺りは雨で遠方の山は何も見えない、新幹線の鉄橋もよく見えない。どんどん進んで養老サービスエリアまで来たが、この雨なんでスルーして、さらに先を進む。やがて米原ジャンクションまでやってきた。今回は、関西方面の渋滞を避けるべく、完成したばかりの若狭舞鶴自動車道を使って大きく迂回するルートを使うのだ。ということで、ここで北陸道にスイッチするのだ。この辺りにきたらようやく空が明るくなってきて雨も止んだ。よし、この調子で晴れて来い、雨雲レーダーには、雨は名古屋周辺から三重の方だけだったから、こっちはいい天気のはずなのだ。しかし、北陸道の山岳地帯に入ったら、またしても雨が降ってきたのであった。シズカダケのサービスエリアも通過する。そして、そこから少し走ったら、いよいよ敦賀ジャンクション、ここで今回初となる、若狭舞鶴自動車道に突入なのだ。
こんな道を走るやつはいるのかと思ったが、後について何台かやってきたんで、やっぱり需要はあるんだな。完成したばかりの道なんで、まだ所々、中央分離帯のない対面走行もあり、それなりのスピードで走ってたら、地元ナンバーのクルマに、追い越し車線が現れた瞬間に抜かされた。スゲー勢いで走って行った、古いクラウン、捕まらないようにしろよ。雨は小降りになってきた。道路の高架になっている辺りから、日本海が見えるようになった。なかなか素晴らしい風景なんだが、走っていては写真は撮れないのであった。そしたら、後ろからスゲー勢いでバイクがやってきて、これまた追い越し車線で追い越された。青いkawasakiのZRXだった。HONDA様がkawasakiごときに後塵を舐めるとは許せんと思ったけど、路面状況も良くないので、今日のところは、許しといたる。
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ところで、この若狭舞鶴自動車道なんだが、何箇所かでジャンクションがあって、いろいろな方向に行っちゃうんだが、まちがえたらえらいことなんで、よくよく注意深く走っていかなきゃならんと思っていたけど意外に普通に走ってて問題なかったから良かった。こうして、予定通り、最初の休憩給油ポイントである、西紀サービスエリアにピットインした。ここまで約250キロ、ノンストップだったぜ。トイレと給油を済ませたら出発する。ちなみに、さっき抜かされたkawasakiもいた。
今気がついたけど、若狭舞鶴自動車道じゃなくて、舞鶴若狭自動車道だったよ。
まあいいや、その若狭舞鶴自動車道に戻って、もう雨も止んでたけど、カッパ着たまま走って、吉川ジャンクションで中国自動車道に合流した。がははは、ここまで渋滞一切なしだぜ。この時期の名神高速、特に吹田あたりの渋滞は殺人的だからな。一回経験したけど、マジで死ぬところだったんだ、もう二度と経験したくない。バイクなんてトンネルの中で渋滞してみろ、マジで窒息する。マジでそれで死にかかったからな。もう嫌じゃ。ゆえに、どんな大回りでも、回避ルートで正解。
高らかに勝利宣言しながら走ってたら、さすがに中国自動車道、交通量も多くなった。そして、何台かバイクにも抜かされた。そのうちの白いハヤブサとBMWは特にスゲー勢いで走って行きやがった。バックミラーに点のように現れるや否や、横をすっ飛ばして行った。衝撃波を食らって転倒しそうになるくらいだった。
揖保の糸で有名な揖保川を越えて、本来の予定通りだったら、ここで三朝温泉に向かうはずだった、作用ジャンクションを越えて、かつてCB1000の最後のツーリングとなった湯原温泉に向かう米子自動車道分岐の落合ジャンクションを越えて、大佐サービスエリアに休憩に止まった。二輪用駐輪場にバイクがいたので、その間に止めた。さっきの衝撃波通過のハヤブサだった。そしたら、「あーっ、keiichiさんじゃないっすか」何という奇遇、kenさんとGTOさんだ! ここであったが百年目。びっくりでした。これからshoさんとこにいくんですよ、といわれてしばし重要会談、で、結局、うまくスケジュール合わせられたらランデブーしましょうということで別れた。
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あとはとにかくひたすら走った。
七塚原サービスエリアで2度目の給油をした。広島県内に入って、ついに青空と太陽が現れたんで、ここでカッパを脱いだ。暑くなってきた。糖分が不足してるので桃ジュースを飲んだ。地図を見たら、ようやく先が見えてきた感じだった。まあしかし、青空と太陽がライダーに与える力は大きいのであった。テンションアゲアゲで行くのであった。で、前後するけど、帝釈峡やら津和野やら、有名な観光地の表示が出るなか、ひたすらひたすら走って、途中、もう一回だけ休憩してペットボトルのお茶を買って飲んで、そして再びひたすらはしる。
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そしてついに、出発から11時間、ついについに、美祢インターに到達したのであった。その距離760キロ、もうやらんぞこんなツーリング。
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そこから国道435号316号を経由して、長門湯本温泉に到着した。ホテルは原田旅館で、市営温泉のすぐそばだった。ご主人が迎えてくれて、バイクは屋根付き駐車場にとめさせてもらえてよかった。荷物を運ぶ。新しいツーリングバックは一度に全部運べるのだぞ。これは実に素晴らしい。泣けるくらいに素晴らしい。チェックイン、部屋はお風呂のすぐ前の萩の間であった。くたびれた。ちょっと休んで荷物整理して、早速温泉に入った。ぬるい湯でぬるぬるで気持ちよかった。出たらツーレポつけて晩飯は部屋で食った。うまかった。食ったら、今度は市営温泉の恩の湯に行く。主人に旅館の温泉との違いを聞いたら、うちは加温してるけどあそこはしてない、源泉も違うというので行ってみた。
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結構混んでた。で、入ったらぬるくてぬるぬるで気持ちよかった。湯船が2つあるんだけど、どう違うのかよくわからんかった。たんのんして出たら、辺りをうろついたけど、、やっぱり寂れた温泉街で何もなく、そうそうに帰った。
帰ってら疲れたんでさっさと寝ちまった。