強烈に凍える飛騨川しみずの湯
1月12日(土)
楽しかったお正月も終わりまして、長い長いお正月休みもおありまして、何が始まるってまたあの無味乾燥とした日常生活が始まるんだよ。毎日毎日ラインに入って製品を確認する無味乾燥な日常生活が始まるんだよ。こんな灰色の人生に何の意味があるんだ、チクショウ、などと思っても、世の中、働かざるもの食うだけなのである。あれ、違うぞ、働かざるもの食うべからずなのである。どんな仕事でも失業してるよりはマシである。我慢して働こう。そんな、諦めの労働観で仕事はじめ、いつも通りにチンタラやってたら、突如、背広姿の男が数人きびきびした動きでこっちにやってきた。ヤバい、あれは本社の製品監査委員だ。こっち来んな、と思ったが、彼らはまっすぐにこっちにやってきた。「keiiichiさんですね」「あわわ」「われわれが何者かわかりますね」「あわわ」「本社に出頭していただきます」「あわわ」こうして本社の監査室に呼び出されたのであった。「keiichiさん、あなたのラインの製品品質調査票を拝見しました。極めて成績が悪い。不連続製係数がこんなに高いラインも珍しい。こんな生産性では我々としては問題視せざる得ない。ご存知のように、今、会社を取り巻く状況は非常に厳しい、そんな中、生き残る為に必要なのは高品質製品の安定供給です。あなたのラインはその目標達成を阻害している。しかし、それ以上に問題なのは何か。それはあなたの思想にあります。あなたはヤマザキ高級粒あんを過大評価している。あんを利用したブレッドはあんぱんだけでないはずだ。ヤマザキにはずっしり小倉デニッシュもある。あなたの見解にはそれが欠落している」「たしかに、あの論文にその視点がないのは認めます。しかし、私の考えではデニッシュはブレッドではない、あれはコンフェクショナリーに分類されるべきだ」「ここでカテゴライズに関する議論を蒸し返す気はない。いいかね、現実にヤマザキパンという日本を代表するブレッドメイカーがブレッドとして生産している、これが現実だ」「カンパニーが価値観に基づいた判断をするとでも思っているのか。それを差し引いたとしてもあんぱんが最も優れたあん嗜好食品である事は間違いない」「あなたはあんデニッシュの味をご存じないようだ。あの幾層にも重なった洋風のデニッシュ生地と餡子という和風の甘みが口の中でとろけ混ざりあう至高の瞬間を」「確かに認めよう。だがずっしり小倉デニッシュには欠けているものがある」「欠けているものだと」「そうだ。高級粒あんパンには栗が入っている事をお忘れか。あの栗の存在、これが高級粒あんパンが最高のあんぱんだという証明だ」「何を言いだすかと思えば、栗の有無があんぱんの評価を左右するとおっしゃるか。そのような理論は実に馬鹿げている。あんこ単体で勝負できぬあんぱんなど笑止千万」「物事にはアクセントが必要なのだ。それにより本体がよりいっそう良質なものになる。これを相乗効果というのだ」「三本の矢理論ですかな。弱い矢が三本、それより強い矢が一本あれば良いと思いませんかな」「それは強者の理論だ。自由市場主義者がいう戯言だ」「あなたとの議論は無駄なようだ」「そのようだな」「ではこれを書いて提出するように。年末に出した不良品の始末書です」「ハイ、すんませんでした」そうなんだよ、ちょっとぼーっとしとったら不良品造っちまったんだよねー。おもろないわー。このやるせない気分、バイクでも走らせんと気が済まん。どうしてくれよう。ということで、ツーリングに行くことにした。
先週、CBR600RRのユーザー車検も無事終わり、毎年毎年、初陣はCB1300SFと決まってたんだが、そのような事情で初陣はCBR600RRになったんだが、今度はCB1300SFでばっちり決めようと思ったんだけど、いよいよ有効期限が近づいて尻に火がついた温泉博士1月号、行けるのが飛騨川しみずの湯、下呂温泉パストール、そして蒲郡ひがきホテルの3カ所しかないんだが、ひがきホテルは坂道が怖いので却下、下呂温泉は入浴は14時30分からなんで却下、しみずの湯は雪の恐れがあるので却下、行くとこねーじゃん。困ったが、温泉博士を利用しないわけにはいかないのでsる。温泉博士は多大な経費削減に貢献しているのである。ゆえに温泉博士優先で、急遽変更、出撃機はFTRに行ってもらいましょう。となれば入浴料金600円のしみずより1500円のひがきの方がお値打ち感があるからひがきに決定した。で、当日、例によって気象庁のサイトで確認すると天気は晴れででも寒そう。ひがきホテルの露天風呂は入れるかなあ。寒そうだよなあ。まあいいか。入浴時間は11時からなんで、早く着くと待ちぼうけになるから、ちょっと時間をずらして出発する事にした。そんなワケで時間もあるので実家でコーヒーを飲んでから行くことにした。コーヒー飲みつつ、優雅に、ひがきホテルに確認の電話をする。ここは不定休なんで、事前に電話で確認しないかんのである。そしたら、ホテルの人が「入れますけど混雑してますからそれでもいいならどうぞ」だとさ。なんですと? 団体客でも入ったか。これまで過去2回、いつも貸し切り露天風呂なんですか、今回は芋煮会ですか? 却下! 仕方がない、雪の恐れがあるがしみずの湯にしよう。そして、あわよくば下呂温泉にも入っちゃえ。よし行き先決定、行くぜ。
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チョークを引っ張ってエンジン始動に多少手間取ったが、一旦かかれば元気よく回るさすがHONDA製である。晴れてるが寒い中出発する。まずはガソリン補給だ。いつもの19号線沿いのコスモ石油に行くのだが、そこまで走るのに既に手足指先は急速冷凍状態なのであった。寒い→冷たい→痛い→感覚麻痺の順番で進むべき所、寒い→感覚麻痺なのであった。ヤバい、これは今日の寒波はかなり手強いぜ。性根を据えて走らねばならんぞ。気合いを入れてコスモ石油に到着すると、さっそくレギュラーガソリン給油。73キロ走って2リットルちょっと入った。まあまあ好成績だな。ちなみに価格はリッター143円なのである。ジワジワと高騰しているのである。給油完了したら出撃だぜ。
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19号線に飛び出して、この一週間の憂さ晴らしに全開バリバリ、ガンガンに走っていくぜ。クゥォーーーーンと高回転のエクゾーストを響かせて、すべてがあっという間に背景になるのさ。誰にもオレを止められないぜェ。と行きたかったんだが、チョーメチャクチャに寒いので制限速度にも達しない速度でチンタラチンタラ走っていくのであった。後ろから全開バリバリのクルマにガンガン抜かされるのであった。クゥォーーーーンと高回転のエグゾーストを響かせて紺色の日産シルビアリアウィング付きに抜かされるのであった。こっちがあっという間に背景になってた。それでも一生懸命に走って行くと、後ろから重低音のエグゾーストを響かせて近寄るクルマ、また80年代クルマバブルを忘れられないおっさん世代のヤンキー改造車が来たかと思ったら、プリウスだった。重低音を響かせて抜かして行ったが、四本出し竹槍風マフラーに車高短のプリウスなんざ初めて見た。その後ろから70年代ロックンロールを大音量で発散する四駆がついていった。いまどき、あんな音楽が外に聞こえるような音量で聞きながら走るクルマも珍しいな。絶滅危惧品種だ。
しかし、事態はそれどころではなかった。指先の麻痺がどんどんひどくなってきていたのだ。多治見に入って、いよいよ事態は切羽詰まってきた。仕方がない、途中で路肩にバイクを止め、エンジンで暖をとる。指先の感覚が戻るまでじっと我慢なのである。日が照ってるので止まっていれば多少暖かい。しばらく英気を養ってから再び出発する。いつもの小泉経由、旧248号線を走って可児を抜けて、途中、信号停止のたびにエンジンで暖をとりつつ進む。木曽川にかかる橋は凍結してるみたいにウエットでそこから先の道もウエットなのであった。だがFTRの18インチブロックタイヤに怖いものはないぜ。おかまいなしでガンガンいくぜ。寒いからゆっくりだけど。指先は凍り付きそうなんで、また止まってエンジンで暖をとる。ちょっと走ったら 指先は凍り付きそうなんで、また止まってエンジンで暖をとる。(以下3回繰り返し)川辺で41号線に合流する。よっしゃー41号だぜ。ガンガンいくぜ、どんどん行くぜ。 寒いからゆっくりだけど。指先は凍り付きそうなんで、また止まってエンジンで暖をとる。ちょっと走ったら 指先は凍り付きそうなんで、また止まってエンジンで暖をとる。(以下3回繰り返し)しかし、セブン工業を越えた辺りで限界になった。もう死ぬかもしれん。トイレ行きたいし、ここは道の駅七宗に緊急避難だ。
道の駅七宗に入った。トイレが工事中で簡易トイレになってた。FTRを止めて手袋とヘルメットを外すのだが、指先麻痺でそれだけでも一苦労なのであった。なんとか外したらトイレに行く。そこでおしっこをするのにナニを出すのだが指先麻痺で取り出そうにも取り出せん。防寒重装備なんで社会の窓が何層にもなってるし、漏れるウと思いつつ、必死こいて取り出して、ようやく済ませる事が出来た。ホッとするねえ。漏らしたらエラいこっちゃもんな。FTRに戻ってしばらく日に当たって休憩する。日に当たっていれば多少は暖かいなんて事全然空くて、走ってるよりは寒くないよという程度。それでもちょっと休憩したら体の感覚が直ってきたので出発だ。
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41号を北上する。さっきちょっと休憩して戻った体の感覚は数秒でまたまたガチガチカチンコチンになって。手足感覚麻痺状態に逆戻りなのであった。後ろから来たクルマにガンガン抜かされながらそれでも必死に進む。天心白菊の碑がある所でまたまた停止して暖をとる。ちなみにこの慰霊碑、賽銭箱があるのを初めて知った。
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白川を過ぎたあたりでまたしても限界点到達なのであった。それでも飛騨金山までがんばって走って、いつものデイリーヤマザキで止まった。そこでまたしても日向ぼっこして体を解凍したら再び出発である。時刻は10時を回っていた。予定を大幅に遅れているぞ。そりゃ止まってばっかりだから時間がかかるわなあ。急がねば。しかし、いつもなら10時を過ぎたらそろそろ暖かくなってくるのに今日は全然暖かくならん。その気配さえない。ゆえにちょっと日向ぼっこで回復しかけた解凍はふたたび凍結なのである。手足どころか脚腕まで冷えが進み、顔の下半分が凍り付いていたのがだんだんアゴの辺りと歯が痛くなってきて、そのうえヘルメットの中にある耳も冷たくなってきて、挙げ句の果てには横っ腹が痛くなってきて、いよいよこれは末期的症状ではないか。ひょっとしたら、これまでにないとんでもない環境で走っているのではないか。そういえば、1月に飛騨に行くなんて、最近なかったよな。春になるまで三河や三重浜松方面に行ってたんだよ。この時期に飛騨に行くのは何年ぶりか、かつてはよかったかもしれないが、地球温暖化が進んでいるこの時代、こんな所へバイクで来る事自体が無謀だったのだ。ちなみに地球温暖化は暖かくなるのではなく、温度差が激しくなる事である。ようするに、夏はメチャクチャに暑くなり、冬はメチャクチャに寒くなる、これが地球温暖化である。それ故に、この極寒の冬に飛騨にバイクで来たのが間違いだったのだ。ダメだ。このままでは凍ってしまう。こんな作戦は止めだ。適当なところで手を打っておこう。そうだ、ちょうど下呂温泉だ。下呂温泉に入って帰ろう。仕方ないよ。こんなに寒いんだから、目的地にたどり着けないけど仕方ないよね。そうだよね。ふぉーっふぉふぉふぉふぉっ! そ、その声は! 老師様! ふぉーふぉっふぉっふぉ、そうじゃよ、老師様じゃよ。お主の言う通りじゃ、寒いから下呂温泉で帰った方が良いぞよ。寒くて体を壊しては意味がないからのう。いっそもうこのまま帰ったらどうじゃ。寒いからもうどこにもよらずに帰るんじゃよ。その方が良いぞよ。もう寒くてたまらんぞよ。寒くて帰ってきちゃったーとツーレポに書けばいいのじゃよ。お主がチキン野郎とみんな知っておるから心配せんでええ。もう帰ってこたつに入ろうよー寒いよー。なんか老師様へンですね? 久しぶりに出てきたらキャラ変わってません? ソそんな事ないよ、そんなこといいから帰ろうよ、寒いよー。そうだねー寒いしねー帰ろうかーって、キサマの正体見切ったぞ!!!! ふぉっふぉっふぉ、ナニを言っておるのじゃ、ワシは老師じゃよ、ふぉっふぉふぉお、ぐっふっふっふ、ぐわっはっはっは! バレたら仕方がないなあ! キサマ、やっぱりそうだったのか、チキンハート! ぐわっはっは、その通り、オレ様はチキンハート様よ! 現れたなチキンハート! 名前のくせになんてでかい態度なんだ。ぐわっはっは、何とでも言うがいい、もう帰るつもりだったんだろ。体はガチガチ、目的地はまだまだ先だ。風邪を引くぞ。意地を張らずに帰れ帰れ。帰ってヤマザキ高級粒あん食ってこたつで寝よう。暖かいよこたつは。さあ帰ろうよ。チクショウ、悔しいけど体が言うことをきかない、どうすればいいんだ。何か必殺技はないか、チキンハートを倒す必殺技‥‥そうだ! 語尾に「ばい」をつければ最強作戦だ! ようし、行くばい。しみずの湯まで行くばい! 行ったるばい! おお、なんか力が沸いてきたぞ。字が違うぞ。お湯沸かしてどうすんだ。力が湧いてきた。温泉が湧いてきた。おっしゃー行けるばい。おいは行けるばい。青春の門挑戦篇ばい。
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こうしてチキンハートを撃滅したオレは、途中、一時休憩を入れながらついにしみずの湯までやってきたのであった。やった、勝った勝ったぞ。バイクを駐車場に止めて建物の方に歩いて行く。久しぶりだなここは。中に入ってまずは下駄箱にブーツを入れた。ショートブーツはギリギリ入る下駄箱だが、ロングブーツは入らんな。これは変わってないままだ。下駄箱のキーを持って階段を登ると受付は2回にある。そこで温泉博士を見せてハンコをもらう。
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下駄箱のキーを渡してロッカーのキーをもらう。そういえばここは1階の無駄に広いホールに比べて2階の過密状態なのが実にアンバランスな構造だったな。これも相変わらずだ。 男湯の暖簾をくぐって脱衣所に入る。ロッカーに荷物を入れて風呂場へ移動する。洗い場でシャワーを浴びたら温度がわからん。手も足も麻痺しちゃってるんで感覚がないもんで全然わからん。しばらく浴びてたら、今度は手足が痛くなってきて内側から熱くなってきた。なんかよくわからんがこんな感覚は初めてだな、解凍してる感じだ。しばらく浴び続けていたらようやくもとの感覚が戻ってきた。ホッとして体を洗うと湯に浸かる。暖かい。ああ、生き返るよ。暖かいよ。気持ちええー。窓越しに青空と中庭が見えて実にいい感じである。来てよかったよ。もうこのままずーっと入ってたいよ。しかしそんなわけにもいかんので、タンノンしたら出た。
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出たらクールダウン、服を着た。そして温泉を後にした。FTRに戻ったら、後は体は冷える前に一目散に帰って来た。
もちろん、帰りに鶏ちゃんを買ってきたよ。
本日の出費
はちみつレモン 130円
鶏ちゃん 360円×2袋
FTR223の本日の走行距離 230キロくらい
FTR223の累計の走行距離 14920キロくらい