10月10日(月) 上陸7日目
5時半に起きた。朝風呂には入れないのが悲しい。荷物の整理をして朝ご飯を食べる。宿の奥さんがいろいろ宗谷の見所を教えてくれた。食って出発する。最北端のガソリンスタンドでガソリンを満タンにすると、記念品をもらった。ラッキー! それから再度、宗谷岬にバイクを止め、しつこく写真を撮って見納めだ。
次は宿の奥さんお勧めのところ。宿の横の道を登っていくと、風車小屋を越えてその先にはすばらしい緑の丘がいくつも続いていた。すごい、宗谷岬にこんなところがあったなんて、全然知らなかったよ。いいことを教えてもらったなあ。バイクを止めて写真を撮る。
国道に戻ると稚内を目指す。最北端の町は、結構都会だったりする。ノシャップ岬についた。納沙布岬を間違えそうな名前だな。ここってこんなに何にもなかったっけ? というくらい殺風景。トイレを済ませて早々に最北端の温泉に向かった。
あっという間に着いて、通過してしまった。戻って温泉のバイク用スペースに止める。といっても、自転車置き場に毛が生えたようなものなんだが。玄関には、準備中の札が。やっぱり早すぎたか。ところがじっちゃんばっちゃんたちはお構いなしで入っていく。えー? じっちゃんばっちゃんは特別かよ。おかしいなと思って、玄関の前までいってのぞいてみると、階段のところで待ってるよ。なんだ、結局入れないんじゃん。9時40分に開店の挨拶とともに、じっちゃんばっちゃんは怒涛のごとく階段を登っていった。すごいバイタリティだ。後からとぼとぼ付いていく自分がじじいみたいだな。
大変に豪華な施設で、温泉は2階になる。料金は600円だが、これだけ立派で600円ならいいんじゃないの。ところが、温泉に入ると状況は急変した。な、なんだ、このエメラルドグリーンのお湯わ。これはバスクリンぢゃないか! あまりの驚きで、日本語の使い方を間違えるくらいだった。たしかに、脱衣場にある分析表は、正式なものではなく、板に書いてある、ディスプレイ用のものしかなかったが、そこには温泉であることが示してはあったが、まさか、このごに及んでこんな温泉に入ってしまうとは、とほほ・・・。
がっくりして、うちひしがれて温泉を後にした。
宿を押さえる。今夜は旭川に泊まる。
サロベツ原野をひた走る。利尻島が遠くに見えるが、雲がかかってあまりきれいではない。途中で撮影などしつつ、また、ぶつかってくる虫の清掃などしつつ、あたりに長く続く単調な直線道路に、狐に化かされてるんじゃないかと思って、気分転換に山のほうに入った。士別方面に向かう。そこから旭川に南下する作戦だ。
が、しかし、今度はくねくね道が単調に続く。まるでライダーズハイな状態で、どんどん走って、まったく止まらず塩狩峠まで来てしまった。
おお、塩狩峠! 小説にあったなあ、宗谷線の暴走事故を、塩狩峠で身を呈して阻止した涙なくては語れないお話。よく考えると、国鉄当時から鉄道事故をよくやってたと言う実証するような話だから、JRの人は聞きたくない話だろうな。とか何とか考えているうちに、塩狩峠文学館だのなんだののあるところが、しっかりくさりがはってあるし、塩狩峠ユースにいたっては、窓ガラスがベニヤで打ち付けてあるじゃなか。おいおい、閉鎖かよ。まあ、閉鎖にもなるわなあ。このご時世、ユースなんか泊まるやつそんなにいねーだろうからなあ。朽ち果てかけた塩狩峠ユースが、初めて北海道ツーリングに行ったとき、泊まろうと思ったこともあったところなので、ちょっと、さびしいです。
ということで、結局、4時間近くノンストップで走ってしまい、旭川にたどり着いてしまった。3時にはチェックインできそうなので、それから市内を観光しようか。と思ったら、急に雨雲が広がってきた。うそだろー、週末まで雨が降らないはずだろ! ぱらぱらっと降ってきたので、やばい! 一目散に宿を目指す。常盤公園に着いたが、場所がわからないので電話して聞いた。40号線沿いにある旭橋のよことのことで、そこに行ったらすぐにわかった。荷物を下ろして、バイクはガレージに入れてくださいといわれて、地かに物置のような広いガレージに入れた。これなら安心だね。
部屋に入って荷物の整理、疲れたのでちょっと休んでから、お風呂に入る。ここのお風呂は一応温泉だ。しかし、光明石温泉なるもので、北海道の民宿にはこの温泉多いよね。能取湖の宿もそうだったし、最北の宿も看板に光明石温泉と出ていた。いったい何なのか、説明を見たら、光明石なる石が風呂に入っていて、身体にいい成分を出すので、身体にいいです、と、実にわかりやすい説明だ。ちなみに光明石は岡山県で取れるそうです。全然北海道と関係ありませんでした。がっかり。
お風呂を出て、部屋に戻ったら電話が鳴った。ちょっとフロントまでお願いしますと言うので、何だろう、バイクが邪魔なのかなと、フロントに行った。そしたら、中年のおっさんがおろおろして、バイクをぶつけてしまったと言った。
まじかよ。
おいおい、冗談じゃないぜ。
22年のツーリング生活にして、遂にツーリング先でバイク損傷かよ。
おっちゃんは宿の若旦那みたいで、奥さんが寒いからと上に着るものを持ってきてくれた。ガレージに下りると、おっちゃんは、暗くてわからなくてバックでぶつけてしまったという。どうかひどくありませんように・・・
リアフェンダーが見事なくらいぽっきりといってた。
特徴ある跳ね上がったリアフェンダーが、完璧に折れていた。
中身のLEDがずらりと並んでいるのがよくわかる。
頭の中がまっしろです。
自走は出来そうだが、これで帰るのはちょっとなあ・・・。おっちゃんはバイク屋に電話して今日中に直せないか聞いてみると言う。そんなの絶対無理なんですけど。方法はここで直すか、もって帰って直すかだ。ここで直すなら1週間くらい足止めだし、もって帰るなら荷物が載らないので自分だけで帰って、バイクや荷物を送ってもらうかだ。とりあえずフェリーはキャンセルだな。本来ならここで直して、納得の行く形で帰りたいが・・・とりあえずもう一度バイクを見る。エンジンはかかり、方向指示器も出る、何とかなりそうだな。まっちゃんに電話する。まあ、怪我したわけじゃないし良かったじゃん。後腐れのないようにしなさいよと、いたって冷静にいわれた。はい。わかりました。では、自走で明日帰ろう。保険屋さんに電話しておく。新日本海フェリーを予約して、太平洋フェリーをキャンセルする。2100円キャンセル料がかかってしまった。どうしてくれるんだよ。何だか急に腹が立ってきた。くっそー、まったく最悪だ。こんな事があってたまるか。あー、でも、よく考えると・・・うー、きっとばちがあたったんだ。まっちゃんが早く帰ってきてと言ってるのに、日にちを延ばしたりわがまま言ってるから、ばちがあたったんだ! ごめんなさいもうわるいことはしませんゆるしてください。ぶじにかえらしてくださいえーんえーん。
とりあえず晩飯の時間になったので食堂で食う。ここはユースホステルみたいに大勢で好きな席で食うようになっている。一人なので、入り口の近くで座って食った。普通の夕飯だった。昔の定食屋の晩御飯。味なんか全然しないし。写真撮りわすれたし。食って部屋に戻る。落ち着かない時間が過ぎる。バイクのところに行って、エンジンを掛けてみたり、ハンドルをきったりいろいろして見たが、問題なさそう。
9時ちょっと前に、保険屋さんが来た。バイクの写真や車の写真を撮って、おかしいところがないか聞くので、それはバイク屋に持ち込まんとわからないと答えておいた。別の食堂で話をする。保険屋さんは全額補償を言ってくれたが、それよりも問題は、買ってばかりなのに事故車になってまったことや、明日もう1日ツーリングするつもりだったのが出来なくなったりしたメンタルな点での補償はどうなるのか聞くと、因果関係が証明できるものに関しては補償しますが、それ以上は無理とのこと。こういうケースは良くあるそうで、ガレージに置いてあった新車に事故で車が突っ込んできて修理になったことがあったけど、やはり新車には替えることは出来なかった。まあ、当然なんだが、こっちとしては納得できない。ぶつけられ損みたいなんですけど申し訳ないと言うので、ちょっとこれにはカチンと来て、ぶつけられ損みたい、じゃなくてぶつけられ損なんですけど、といやみったらしく言ってやった。しかし、これ以上の話は無駄なので、バイクの修理はしっかりするのと、フェリーのキャンセル料金などは補償してもらうことを約束した。
部屋に戻って待っちゃんに報告して、ふて寝だ。